空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
連載一覧はこちら>>
春のかすんだ空
冬は明瞭に見えていた遠くの山が、春になると不明瞭になり、青空もかすんで見えることがあります。これは、大気中に浮遊する微粒子によるものです。
大気中に浮遊する微粒子は「エアロゾル」と呼ばれます。エアロゾルには、PM2.5(直径0.0025ミリメートル以下の非常に小さな粒子)といわれる大気汚染物質のほか、ちりや土埃、自動車や工場からの排気ガス、黄砂などが含まれます。
空が青く見えるのは、太陽の光が空気分子や光の波長よりも小さいエアロゾルなどに当たって散乱されるためです。この散乱は「レイリー散乱」と呼ばれ、目に見える太陽光(可視光)のうち、波長の短い青色ほど強く散らばる性質があります。これにより、日中の空は青く見えています。
一方で可視光は、光の波長よりも大きな粒子のエアロゾルによっても散乱されます。この散乱は「ミー散乱」と呼ばれ、光は波長に関係なく四方八方へ散らばります。こうして散乱された光は、混ざり合い、その結果、空が白くかすんで見えるようになります。
春は、大陸から大気汚染物質や黄砂が飛来しやすく、花粉も舞う季節。エアロゾルが多くなりやすいために、春の空はかすんで見えることが多くあるのです。
その上、地表面はまだ乾燥しており、農作物が植えられていない田畑も多く、砂埃や土埃が舞い上がりやすい状況です。そのため、風が強まれば大気中には多量のエアロゾルが舞い上がり、空は一層かすんで見えるようになり、地平線に近い空は、遠くが見渡せないほど視界が悪化することがあります。
同じ青空でも、季節によって、そして日々の大気の状態によっても、その色合いは変化します。今日、そして明日の空は、どのような青色でしょうか。
●関連記事を読む
・
空が青く見えるのはなぜ? 空についての身近な疑問に答えます・
春の風物詩「黄砂」が日本に飛来するまでの過程とその対策
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
X・
Instagram・
YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
X・
YouTube●参考文献/『雲の中では何が起こっているのか』荒木健太郎著(ベレ出版)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』荒木健太郎著(ダイヤモンド社)