名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
連載一覧はこちら>>
速水(はやみ・はやみず)
「はやみ」と読む名字にはいろいろな書き方があります。最も多いのが「速水」で、名字ランキングでは3000位以内のメジャーな名字です。
ルーツとなった場所は文字通り流れの速い川です。こうした場所は「はやみ」という地名になり、そこに住んだ一族が「速水」を名字としました。
最も有名なのが、近江国浅井郡速水郷、現在の滋賀県長浜市湖北町速水です。JR北陸本線河毛駅の西側で、高時川の右岸に位置しています。高時川は普段は穏やかな川なのですが、一旦大雨が降ると急流となり過去には何度も氾濫しました。
その一方で、水を得やすい地形で米作りには適しており、古くから開発されていました。そのため、ここを本拠とする速水氏が誕生したのです。
朝廷の下級官僚である地下(じげ)を務めた速水家や、江戸時代に新発田藩(現在の新潟県)の重臣だった速水家はこの地をルーツとしています。
「速水」と書いて「はやみ」と読むのはやや難読のため、漢字本来の読み方に従って「はやみず」と変えた家もたくさんあります。ルーツである滋賀県では8割以上が「はやみ」ですが、他県では「はやみ」と「はやみず」に読み方が分かれ、全国を合計すると三分の一ほどが「はやみず」と読みます。
さらに「はやみ」という読み方に合わせて「速見」としたり、「速」を「早」に変えた「早水」「早見」などもあります。
最多は「速水(はやみ)」で、次いで「速水(はやみず)」「早水(はやみず)」「早見」「速見」の順となっています。
「忠臣蔵」に登場する赤穂四十七士の一人、早水(はやみ)藤左衛門も、近江速水をルーツとする速水氏の末裔と伝えています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)