空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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気温でできる桜の開花予想
寒さが徐々に和らぐこの時期、桜の開花が近づき、春への期待も自然と高まります。各民間気象会社から発表される桜の開花予想を通して、「桜の季節がもうすぐそこだ」と感じる人も多いでしょう。年明けのまだ寒い時期から始まる開花予想は、いったいどのようにして導き出されているのでしょうか。
気象庁が定義する「さくらの開花」とは、観測する対象の木(標本木)で5~6輪以上の花が咲いた状態です。また、標本木で約80パーセント以上の花が咲いた状態となると「満開」となります。
桜の花の準備は前年の夏から始まっています。翌春に咲く花のもとになる「花芽」は、初夏に形成され、秋にかけて休眠状態に入ります。その後、秋から冬にかけて、一定期間、5℃前後の低温にさらされることで、桜は休眠状態から目覚めます。これを「休眠打破」と呼びます。休眠打破を経たのち、春に向かって気温が上昇するのに伴い花芽は生長し、やがて開花に至るのです。つまり、桜の開花には気温の変化が大きく関わっています。
こうした桜の生態と過去の統計をもとに、気象庁ではDTS(温度変換日数;the number of days transformed to standard temperature)という計算式を用いて桜の開花予想を行っていました。民間気象会社ごとに開花予想日が異なるのは、この計算手法に各社独自の工夫を加え、それぞれが開発した予測技術を用いているためです。
複雑な計算式を使わずとも、私たちも簡易的に桜の開花予想をすることができます。代表的な手法は「400℃の法則」と「600℃の法則」と呼ばれます。
400℃の法則は、2月1日以降の一日ごとの平均気温を足し合わせていき、その合計が400℃を超えた日に開花するというものです。一方、600℃の法則は、同じく2月1日からの一日の最高気温を足し合わせ、合計が600℃を超えた日に開花するというものです。
2月1日以降の平均気温と最高気温は、気象庁ウェブサイト「過去の気象データ検索」で、地点を指定して調べることができます。開花日が近づいてきたら、週間予報の予想気温を足し合わせてみると、自分でも桜の開花予想ができそうで楽しみが広がります。
写真/荒木健太郎
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/青森地方気象台『あおもりゆきだより2024 最終号「さくらの開花予想の簡易的な手法と精度比較」』URL:https://www.data.jma.go.jp/aomori/pub-relations/pdf/yuki/yuki2024_05a.pdf、『温度変換日数を用いたサクラの開花日の簡便推定法』青野靖之、小元敬男著、気象庁『過去の気象データ検索』URL:https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php、一般社団法人日本植物生理学会『みんなのひろば「植物Q&A」』URL:https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3715