空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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雪は食べられるか
まだ誰も足を踏み入れていない真っ白な新雪を見ると、つい口に入れてみたくなったり、「かき氷のシロップをかけて味わえたら」と想像したりする方もいるかもしれません。では、雪はかき氷のように食べられるものなのでしょうか?
結論から言うと、雪を食べることはおすすめできません。なぜなら、雪は決して衛生的なものではないからです。
雪の結晶のもとになる極小の氷の粒は、黄砂、ディーゼルエンジンの排気ガスや森林火災に由来するすす(黒色炭素)、花粉、バクテリアなどのエアロゾル(大気中のちり)を芯として形成されます。そこに、水蒸気が凝華していくことで成長し、雪の結晶になります。
さらに雪が落下する最中にも、大気中に浮遊するちりやほこりを表面に付着させながら降ってきています。雪が融けた後、屋外に駐車していた車の表面が汚れていることがあります。これは、雪の芯となったエアロゾルだけでなく、落下中に吸着したエアロゾルなどの不純物が原因です。過去には、降ってきた雪に含まれるエアロゾルの成分を調べた結果、観測地点近くの養豚場にいる豚の腸内菌が見られたことも報告されています。
雪は、鑑賞したり雪だるまを作ったりして楽しみ、かき氷は清潔な氷を削って味わうのが安心です。
写真/フォトライブラリー
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/中谷宇吉郎 雪の科学館『おしえて館長!『雪と氷のQ&A』~雪と氷に関する素朴な疑問から最新の科学まで~』URL:https://yukinokagakukan.kagashi-ss.com/、『雲の超図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、『雲の中では何が起こっているのか』荒木健太郎著(ベレ出版)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)