空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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冬の東北地方で見られる波状雲
地上から見上げる雲は、形の面白さや迫力ある姿など、多彩な表情を見せますが、宇宙から眺める雲もまた興味深いものです。
冬になると、気象衛星画像では、東北地方の太平洋側に南北にのびる規則正しい縞模様が現れることがあります。この雲は「波状雲」と呼ばれます。
波状になる要因は、「風下山岳波(かざしもさんがくは)」と呼ばれる大気中の波動にあります。山にぶつかった空気は斜面を上昇し、山を越えて風下側に下降します。これに伴う大気の振る舞いを総じて山越え気流といいます。山越え気流に伴って、山の風下側では空気が上下に波打つ波動が生まれ、これが上空にも伝わったものが風下山岳波です。風下山岳波に沿って空気が動き、波の山に向かって上昇する所では雲ができ、谷に向かって下降する所では雲が消えます。山脈の風下でこの過程が繰り返されることで、幾筋もの雲の波が形づくられるのです。
波状雲の興味深いところは、同じような場所に留まり続ける性質にもあります。
西高東低の冬型の気圧配置で、大陸から吹き出す北西~西の風が奥羽山脈を越える際に、南北に連なるように東向きに風下山岳波が生じます。このため、東北地方の太平洋側では波状雲が現れやすくなります。気圧配置が大きく変化しなければ、風下山岳波もほぼ同じ場所にでき続け、空気の上昇・下降も同じような位置で繰り返されます。その結果、波状雲も同じような場所に留まり続けるのです。
この様子は、気象庁のウェブサイトなどで公開されている気象衛星画像を、過去から現在へと連続して見てみるとよくわかります。まわりの雲は流れているのに、雲の波だけが同じ位置に留まっている──。不思議で印象的な光景です。
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写真/NASA
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/気象庁『気象衛星ひまわり』URL:https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#5/37.684/136.362/&elem=ir&contents=himawari、『雲の超図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)、『雲を愛する技術』荒木健太郎著(光文社)