空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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御神渡り(おみわたり)
冬には、長野県の諏訪湖などで「御神渡り(おみわたり)」という現象に出合えることがあります。
御神渡りは、凍結した湖面に割れた氷がせり上がり、山脈のように連なる現象です。その名称は、諏訪神社の男神(おがみ)が女神のもとへ通う道筋にたとえられたことに由来します。
では、御神渡りはどのような過程を経て生じるのでしょうか。
冬に低温になると湖面が湖岸から凍りはじめ、気温-10℃以下の強い冷え込みが数日続くと湖面全体が凍結(全面結氷)します。さらに低温が続いて、10~20センチメートル程度の厚さにまで氷の板が成長すると、氷の収縮により亀裂が生じ、露になった水面が新たに凍結します。日中と夜間の気温差が大きくなると、今度は日中の気温上昇に伴って氷の板が膨張し、新しくできた氷は押し上げられ隆起します。こうして御神渡りが始まり、氷の板が片方に乗り上げて重なったり、ぶつかって突き上げられたりしながら、日ごとに成長していきます。
御神渡りの記録は、1444年から580年以上にわたって存在し、過去の気候を推定する貴重な資料としても注目されています。その記録から、御神渡りの発生時期が遅くなっていることや、全面結氷が起こらない年が増加していることなども分かってきました。
かつては、冬の風物詩として親しまれてきたこの現象は、いまや珍しいものになりつつあります。
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写真/写真AC
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/「雪氷」83巻4号『御神渡りの発生と成長発達について』東海林明雄、ウェザーニュース『地球温暖化で「御神渡り」が幻に? 600年間の記録から見えてきたこと』 URL:https://weathernews.jp/news/202502/040205/、『雪と氷の疑問60』公益社団法人日本雪氷学会編 高橋修平、渡辺興亜編著(成山堂書店)、Scientific Reports『Direct observations of ice seasonality reveal changes in climate over the past 320–570 years』Sapna Sharma、John J. Magnuson、Ryan D. Batt、Luke A. Winslow、Johanna Korhonen、Yasuyuki Aono URL:https://www.nature.com/articles/srep25061