空を見上げて365 私たちの身近にある空には未知の魅力や不思議が詰まっています。誰かに話してみたくなるような空の世界を、雲研究者の荒木健太郎さんが案内します。一緒に今日の空を見上げてみませんか。
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ブロッケン現象
登山中、立ち込めていた霧が晴れつつある山の稜線に立ったとき、ふと目線を山の下へ落とすと、虹色の環を纏う大きな人影が目の前に浮かんでいる──。そんな不思議な光景に出合うことがあります。
この影の正体は登山者自身の影で、その周囲を彩る虹色の環は正式には「光輪」と呼ばれます。この影と光輪をあわせて「ブロッケン現象」といいます。
ブロッケン現象は、太陽を背にして立ったときに、影の伸びる方向にある雲や霧に見られます。雲や霧を構成する水滴に太陽光が当たると、光は回折して虹色に分けられます。その光が、自身の影の周りに環状に、内側から外側に向かって紫~赤へと規則的に並ぶことで、ブロッケン現象が見られるのです。
名前の由来は、ドイツのブロッケン山でこの現象が頻繁に目撃されたことにあります。科学的に説明されるようになる以前は、この現象は、「ブロッケンの妖怪」とも呼ばれていました。
ブロッケン現象は、飛行機からも観察できます。太陽と反対側の窓側座席に座っていたら、眼下に広がる低い空の雲に注目してみてください。飛行機の影の周りに美しい光輪が現れるかもしれません。
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写真/猪熊隆之
監修/荒木 健太郎 Kentaro Araki雲研究者・気象庁気象研究所主任研究官・学術博士。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、災害をもたらす雲の仕組みを研究している。映画『天気の子』気象監修。『情熱大陸』『ドラえもん』『マツコの知らない世界』など出演多数。著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズなど。
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YouTube文/佐々木 恭子 Kyoko Sasaki気象予報士・防災士。合同会社てんコロ.代表。民間気象会社で予報業務を担当、気象予報士受験生向けのスクール主宰。著書に『眠れなくなるほど面白い 図解 天気の話』(日本文芸社)など。
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YouTube●参考文献/『雲を愛する技術』荒木健太郎著(光文社)、『すごすぎる天気の図鑑』荒木健太郎著(KADOKAWA)