〔特集〕浮世絵師たちの風雅な「花鳥版画」の世界 ロックフェラー・コレクション 花や鳥、虫などを掛軸や屛風などにいきいきと描く花鳥画は、古来、日本画の人気ジャンルでした。それを葛飾北斎や歌川広重など人気の浮世絵師たちが浮世絵として描いたのが「花鳥版画」です。王道ジャンルである役者絵や美人画、風景画ではなく、花鳥画に魅せられ熱心に収集したのが、20世紀最大の富豪ロックフェラー家当主の妻にして、ニューヨーク社交界の花形だったアビー・オルドリッチ・ロックフェラー。彼女が心血を注いで集めた700点あまりの作品は、米国のロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館(通称RISD美術館)に寄贈されています。2026年、コレクションより厳選された163点が来日、全国を巡回します。
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初めて来日する作品に刮目。伊藤若冲の「雌雄鶏図」
今回来日するロックフェラー・コレクションには極めて珍しい作品が含まれています。それは、伊藤若冲による「雌雄鶏図」です。若冲らしい独創的なデザインセンスが印象深いこの作品では、若冲版画の多くに見られる拓版が用いられています。
拓版とは凸凹のあるものに紙をのせ、その上から描画材を直接押し当てることで版となる素材の文様や図柄をトレースする技法のこと。石碑の銘文を写し取る方法に似ています。
アビーはこの作品を山中商会(ハウス・オブ・ヤマナカ)から購入しています。山中商会はロックフェラーなどアメリカの大富豪にアジアの美術品を納めていた古美術商です。マンハッタンの五番街にあった店舗は、ロックフェラー家がオーナーのビルにありました。アビーの「花鳥版画」コレクションには山中商会から入手したものが100点以上あります。
ところで、展覧会に先立ち行われた調査では、ほかに「雌雄鶏図」の所在が知られておらず、確認される唯一の版とのこと。初来日の若冲、必見の一枚です。
伊藤若冲 Itō Jakuchū(1716 - 1800年)

「雌雄鶏図」伊藤若冲 木版彩色摺 江戸時代(1603-1868)
他に所在が知られておらず、確認される唯一の版と思われる。江戸時代の紙に間違いなく、若冲版画の多くに用いられた拓版(正面摺か)による背景の黒色、墨線の掠れ等、筆致の勢いが意識された主版のあり方、錦絵時代になっても京では長く行われた合羽摺による彩色が施されているなど、江戸の浮世絵版画にはない特徴からも本物と判断された。若冲らしいユーモラスな表現となっている。
Hen and Rooster Itō Jakuchū 38.3×24.7cm Edo period(1603-1868)
開館30周年記念 ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン所蔵
ロックフェラー・コレクション花鳥版画展
北斎、広重を中心に

アビー・オルドリッチ・ロックフェラー(1874-1948)によって収集され、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館(通称RISD美術館)に寄贈された700点あまりの花鳥版画コレクションから163点が来日します。浮世絵師たちによる花鳥版画を一堂に鑑賞することができる貴重な機会です。
千葉市美術館2026年1月17日~3月1日
住所:千葉市中央区中央3-10-8
電話:043(221)2311
https://www.ccma-net.jp ※以後、次の3館を巡回。
山口県立萩美術館・浦上記念館/2026年4月18日~5月31日
三重県立美術館/2026年6月13日~7月26日
北斎館/2026年8月8日~10月12日
ロックフェラー・コレクション
アビー・ロックフェラーが愛した北斎と広重 「花鳥版画」の世界

上で紹介した展覧会に出品される人気の浮世絵師たちが手がけた花鳥版画を全点収録。アビー・オルドリッチ・ロックフェラーの人となりがわかるプロローグに始まり、「花鳥版画を手がけた浮世絵師たち」「広重花鳥版画の華―大短冊判花鳥版画を中心に」「北斎と北斎派の花鳥版画」「季節の風情『団扇絵』の名品」「詩歌と絵を楽しむ 広重の短冊判花鳥画」「小さく愛しき花と鳥」6つの章で徹底詳解。専門家だから書ける詳細な作品解説、コラムなどを楽しむことができます。
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詳細はこちら>>>ISBN978-4-418-26200-7
定価3,000円(税込)
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