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ロックフェラー・コレクションの半数を超える、歌川広重による多彩な作品

2026.02.05

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〔特集〕浮世絵師たちの風雅な「花鳥版画」の世界 ロックフェラー・コレクション 花や鳥、虫などを掛軸や屛風などにいきいきと描く花鳥画は、古来、日本画の人気ジャンルでした。それを葛飾北斎や歌川広重など人気の浮世絵師たちが浮世絵として描いたのが「花鳥版画」です。王道ジャンルである役者絵や美人画、風景画ではなく、花鳥画に魅せられ熱心に収集したのが、20世紀最大の富豪ロックフェラー家当主の妻にして、ニューヨーク社交界の花形だったアビー・オルドリッチ・ロックフェラー。彼女が心血を注いで集めた700点あまりの作品は、米国のロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館(通称RISD美術館)に寄贈されています。2026年、コレクションより厳選された163点が来日、全国を巡回します。

特集「ロックフェラー・コレクション 浮世絵師たちの風雅な「花鳥版画」の世界」の記事一覧はこちら>>>

コレクションの半数を超える歌川広重による多彩な作品

「花鳥版画」の分野で浮世絵師随一の作画量を誇るのが歌川広重。アビー・ロックフェラーのコレクションにおいても、400点を広重の作品が占めています。なかでも大短冊判と呼ばれる判型(約38×17.5センチ)の作品は、和漢の伝統的な花鳥画に深く根ざした広重の「花鳥版画」を代表する作品として高く評価されているのです。

その多くには、絵の傍らに俳諧などの讃が記されています。絵とともにその讃を味わうことで、広重の「花鳥版画」への理解が一層深まり、魅力が引き出されます。北斎が自らのユニークな造形感覚で個性的な作品を創り出したのとは対照的に、広重は常に鑑賞者の意向に寄り添うような、客観的に好まれる表現をします。讃の意に沿って、詩的な情趣を表出した作品群は、広重ならではの心地よい感覚をもたらす表現といえるでしょう。


広重は「花鳥版画」の団扇絵も多く残しています。団扇絵とはその名のとおり、夏の風物詩として古くから親しまれてきた団扇の骨に貼るために制作されました。消耗品でありながら広重のような人気の絵師による洗練された図柄が求められたのは、団扇が単に涼をとる道具にとどまらず、夏の装いを彩るお洒落な小道具だったからです。

アビーのコレクションには広重を含む30点ほどの花鳥団扇絵が良好な状態で残されています。

歌川広重 Utagawa Hiroshige(1797 - 1858年)

「烏瓜に目白/芍薬に小鳥」歌川広重 中短冊判錦絵(大四つ切判錦絵×2図分) 天保3-6(1832-1835)年頃
ぼかしが効果的に用いられる美しい2図である。烏瓜は秋の景物。所狭しとひしめくのは緑色に摺られた目白で、その表情は可愛らしい。下の図の句は「芍薬に20日間咲きたいという欲はない」という意で、移ろいゆくものの美しさを表していると考えられる。
White-eyes and Snake Gourds/Herbaceous Peonies and Small Bird Utagawa Hiroshige 37.5×12.8cm c.1832-1835

「雪中椿に雀」歌川広重 大短冊判錦絵 天保3-6(1832-1835)年
背景に雪を降らせ青色のぼかしを施している。若狭屋の版元印があり、降雪する背景を灰色のぼかしにする作例もある。版元が佐野屋喜兵衛に変わると、降雪する背景が灰色一色でぼかしが消える。幾度も摺り重ねられた人気作とわかる。
Tree Sparrows and Camellia in Snow Utagawa Hiroshige 38.0×17.4cm c.1832-1835

「六花撰之内 かきつばた」歌川広重 団扇絵判錦絵 安政3(1856)年4月
水辺に花を咲かせるかきつばたが描かれている。水辺の鮮やかな青や花弁の濃い藍色が、団扇絵らしい涼しげな印象をもたらす。水中のかきつばたの葉や茎が透けて見えるような表現が、水の透明感や清涼感を効果的に演出している。
Iris, from the series Six Selected Flowers Utagawa Hiroshige 22.6×28.3cm 1856, 4th month

「燕のことろ遊び」歌川広重 団扇絵判錦絵 嘉永期(1848-1854)頃:燕の特徴的な二股の尾翼を足に見立て擬人化した戯画。ことろ遊びとは、列の最後尾の者が鬼に捕まらないように逃げる遊戯である。鬼役と向かい合った先頭の燕は、両翼を広げて列を守っている。本来の署名は「広重戯筆」だが、本図では「筆」の字が消えている。
Playing Swallows; Parody of Children’s Play Kotoro Utagawa Hiroshige 22.8×29.3cm c.1848-1854


開館30周年記念 ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン所蔵
ロックフェラー・コレクション花鳥版画展
北斎、広重を中心に

アビー・オルドリッチ・ロックフェラー(1874-1948)によって収集され、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術館(通称RISD美術館)に寄贈された700点あまりの花鳥版画コレクションから163点が来日します。浮世絵師たちによる花鳥版画を一堂に鑑賞することができる貴重な機会です。

千葉市美術館
~2026年3月1日
住所:千葉市中央区中央3-10-8
電話:043(221)2311
https://www.ccma-net.jp
※以後、次の3館を巡回。
山口県立萩美術館・浦上記念館/2026年4月18日~5月31日
三重県立美術館/2026年6月13日~7月26日
北斎館/2026年8月8日~10月12日

ロックフェラー・コレクション
アビー・ロックフェラーが愛した北斎と広重 「花鳥版画」の世界

上で紹介した展覧会に出品される人気の浮世絵師たちが手がけた花鳥版画を全点収録。アビー・オルドリッチ・ロックフェラーの人となりがわかるプロローグに始まり、「花鳥版画を手がけた浮世絵師たち」「広重花鳥版画の華―大短冊判花鳥版画を中心に」「北斎と北斎派の花鳥版画」「季節の風情『団扇絵』の名品」「詩歌と絵を楽しむ 広重の短冊判花鳥画」「小さく愛しき花と鳥」6つの章で徹底詳解。専門家だから書ける詳細な作品解説、コラムなどを楽しむことができます。

詳細はこちら>>>
ISBN978-4-418-26200-7
定価3,000円(税込)

(次回へ続く。この特集の一覧>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年02月号

家庭画報 2026年02月号

編集協力/ロックフェラー・コレクション展実行委員会

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