名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:水流(つる)
「水流」と書いて、名字では「つる」と読みます。難読なのですが比較的数が多く、名字ランキングでは5000位以内に入るメジャーな名字です。さらに「○水流」というバリエーションも多いため、読める人も多いと思います。この名字は地形に由来しています。
では「つる」とはどういう地形かというと、九州では細い川や、折れ曲がった流れのことを「つる」といいました。こうした「つる」の近くに住んだのが「つる」さんです。そして、「つる」を漢字にする際に、いろいろな漢字をあてたのです。
最も多いのが、福岡県南部から佐賀県東部・熊本県北部にかけての筑後川流域に集中している「鶴」です。確かに「つる」に漢字をあてるとすれば、これが最もわかりやすいでしょう。もちろん、鳥のツルに因む「鶴」名字もありますが、「鶴」の多くは小川の流れに因んでいます。
次いで多いのが、「つ」と「る」にそれぞれ一つずつ漢字をあてた「津留」です。とてもわかりやすい当て字で、熊本県を中心に九州一帯に広がっています。大分県津久見市には「中津留」、福岡県久留米市には「津留崎」、大分市や別府市には「大津留」といった名字が集中しているなど、派生した名字もたくさんあります。
そして3番目に多いのが、水の流れという言葉の意味をそのまま漢字にした「水流」で、こちらは鹿児島県から宮崎県南部にかけて分布しています。意味的には正しいのですが、漢字としてはかなり難読です。
こちらも多くのバリエーションがあり、鹿児島県では「下水流」「上水流」「桑水流」「杉水流」や、「水流添」「水流園」といった名字もみられます。
このほかにも、大分県北部には「都留」や「都瑠」という書き方もあります。
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森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ(
https://esprit-de-mami.com/)