カルチャー&ホビー

五木寛之×藤井フミヤ 新春スペシャル対談(後編)~なくならない戦争への思い、そして平和とは

2026.01.09

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〔新春スペシャル異世代同郷対談〕五木寛之(作家)藤井フミヤ(ミュージシャン) ふるさとへの思い、平和への願い 2026年に作家デビュー60年を迎えられる文壇の重鎮、五木寛之さんと、ミュージシャンとして40年以上にわたって第一線で活躍されている藤井フミヤさんは同じ九州・福岡のご出身。唯一無二の文学と音楽で多くの人々に喜びや感動をもたらしているお二人が、ふるさと、創作活動、平和などをテーマに、思いの丈を語り合ってくださいました。前回の記事はこちら>>

夢見た未来とは違った21世紀。なくならない戦争への思い

藤井──この年になると、戦争は終わらないんだなと感じますね。自分が生まれてから、一度も、地球上に戦争がなかったことがないので。あと、僕らはずっと、テレビが21世紀を輝かしい未来のように語るのを聞いていたから、「どんな素晴らしい平和な世になっているんだろう」と楽しみにしていたら、全然違って。冷戦が終わったと思ったら、今度はテロの時代がやってきて、余計にややこしくなってきたなと感じます。自然災害も増える一方ですし。五木さんはどうお考えですか。

五木──いや、確かに、今までの歴史を見る限り、戦争はなくならないと思う。人が死ぬのと一緒で。戦争なんて、絶対やらないほうがいいに決まってるけど、何千年も前から、ずっとやり続けてきてるわけでしょう。人間ってなんなんだろうなと思うね。

藤井──地球の民の90パーセントは戦争なんてないほうがいい、平和がいいと思ってるはずですよね。なのに戦争はなくならない。


五木──そう考えると本当に困ったことなんだけど、見方を変えると、平和な時代というのは、ものすごく強い権力や圧力でみんなが抑え込まれてる時代、世界が一つの強大国の支配下にある時代かもしれないという気もするんですね。民主主義というけれど、一人一人が自分の権利を主張すれば、当然、争いは絶えませんよ。だけど、そこを僕らがなんとかしないといけない。僕は、敗戦で外地から引き揚げてきたことが、一生の行動の基盤になってるんです。敗戦がどれだけ大変だったか。それを考えると、やっぱり戦争だけは認めてはならないと思います。

藤井──僕らは映像や小説で戦争の話に触れることはあっても、そこに実際の匂いなどはないわけで……。五木さんがされたような体験は繰り返されてはならないと思うし、これからも日本は平和であってほしいと思います。

ところで、最近インバウンドの人が増えて、日本もグローバル化が本格的に進んでいると感じますが、どう思われますか。

五木──僕は先日金沢に行きましたが、金沢もインバウンドの人の数がすごかったです。

藤井──最近、地方にも増えてますね。今はスマホがあれば、どこのことも行き方も簡単に調べられるから可能なんでしょう。そうした海外の人たちの動向を通して、僕ら日本人が日本のよさを再発見する風潮もあるように感じます。

五木──インバウンドのことは僕もよくわからないけれど、アメリカもヨーロッパもどこも、自国民と他民族との関係がかなりギシギシしてることは間違いないですね。僕は旧満州や朝鮮などへインバウンドとして行って、追い返されたわけですが、「なんで戦争に負けたら引き揚げてこなきゃいけないんだ。その土地に根付いて生きることは考えなかったのか」といわれたことがあります。中国に「落地生根落葉帰根」ということわざがありますが、中国人はアメリカでもアジアでも、行った先で中華街をつくりますよね。

藤井──つくりますね、どこにでも。

五木──日本人街もありますけど、少ない。いつかは成功して、ふるさとへ帰りたいと思うのが、日本人だと思う。

写真/ myth9for / PIXTA(ピクスタ)

写真/ myth9for / PIXTA(ピクスタ)

藤井──大陸と島国の違いですかね? 日本人は海外に住んでいても「日本のお墓に入りたい」といいますよね。僕らの世代はアメリカに行ったきりになった友達もいるんですけど、彼ら、お墓はどうするんだろうなって。

五木──いや、藤井さんからお墓の話を聞こうとは思わなかった(笑)。

「歴史を見る限り、戦争ってのはなくならない。人が死ぬのと一緒なんです」──五木 「女性が元気で明るければ、その国は平和かなと思うんですよね」──藤井

「歴史を見る限り、戦争ってのはなくならない。人が死ぬのと一緒なんです」──五木
「女性が元気で明るければ、その国は平和かなと思うんですよね」──藤井

藤井──でも、女性は違うかもしれませんね。外国の人と結婚したら、その国へ行って根付くケースが多い気がします。女性のほうがグローバルな感覚があるのかな。僕はなんか、女性が元気で明るければ、その国は平和かなと思うんですよね。家庭も、お母さんが明るければ明るいじゃないですか。僕は何かで「男は女性がいないと生きていけない」という話を読んだことがあるんです。女性というのは娘でも孫でもいいんだけど、とにかく完全に男だけで孤立していたら、パワーを失っちゃう。独り身になった男の人が、近所のスナックに飲みに行ったりするのは、そういうことなのかなって。五木さんもそう思われませんか?

五木──うーん、僕はどちらかというと、孤独というか、一人が好きなんだ。だから、結婚していても、それぞれ一人という生活が本当はいいんだけど。子どもがいる人はそうはいかないだろうね。

藤井──五木さんはお仕事柄、いつも出版社の女性がそばにいるじゃないですか?

五木──最近は女性の編集長ばかり(笑)。でも僕はやっぱり仕事ができる人がありがたいね。どんなに魅力があっても、仕事ができない人は困るよね。

藤井──そうなんですね。

五木──今はもうね、どこの編集部の担当編集者も女性なんですよ。あっちもこっちも、みんな女性(笑)。今度は総理大臣まで。

藤井──そうですね。なんか、今の世の中、女性のほうが楽しそうだなと思って。お洒落にしても、食べ物にしても、旅行にしても、女性のほうが生き生きしてる気がしません? 僕のライブのお客さんももう圧倒的に女性、90パーセントが女性で、みんな楽しそうですよ。

五木──楽しいでしょうね。一度、ライブに行かせてください。

藤井──ぜひ。ご招待します。

五木──それにしても、藤井さんはデビューした頃の少年のような面影がそのまま残ってる感じで、いいね。同郷ということもあって、今日は親戚と話をしているような気分で、気楽に話ができて楽しかった。

藤井──こちらは範宴がようやく法然に会えたという感覚で、感慨深いです。最後に僕のバイブル『大河の一滴』にサインをいただけますか。今日は本当にありがとうございました。

五木寛之(いつき・ひろゆき)
1932年福岡県八女郡(現八女市)生まれ。生後まもなく日本統治下の朝鮮に渡り、終戦後の47年に引き揚げる。早稲田大学ロシア文学科中退。66年『さらばモスクワ愚連隊』で作家デビュー。同年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞受賞。代表作に『青春の門』『親鸞』など。現在『大河の一滴 最終章』を執筆中。93歳にして好奇心旺盛、意気軒昂。小誌「こころのレシピ」ほか新聞や雑誌に8本の連載を持つ。

藤井フミヤ(ふじい・ふみや)
1962年福岡県久留米市生まれ。83年にチェッカーズのボーカルとしてデビューし、一世を風靡。ソロアーティストに転向した93年、自ら作詞作曲した「TRUE LOVE」が200万枚突破の大ヒット。音楽活動のかたわら、CG画などアートの世界でも才能を発揮している。現在、2度目となる47都道府県コンサートツアー『FUTATABI』を開催中(~2026年7月)。ツアー先にも本を数冊持参する読書好き。

この記事の掲載号

『家庭画報』2026年01月号

家庭画報 2026年01月号

撮影/野口貴司(San Drago) 文/清水千佳子 撮影協力/ホテルニューオータニ(東京)

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