〔特集〕その魅力は世界へ、未来へ歌舞伎こそ、“国の宝” 三大義太夫狂言の通し上演が話題を集め、映画『国宝』が歴史的ヒットを記録するなど、今、ふたたび“歌舞伎”が世界的にも注目を浴びています。伝統を受け継ぎながら進化を続けるその普遍的な魅力をさまざまな角度から紐解きます。
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【前編】映画『国宝』がもたらしたもの→・
【中編】上方歌舞伎が醸し出す味わい→・
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『国宝』は歌舞伎を舞台にした映画ですが、同時に、歌舞伎俳優の生き様を描く映画にしたかった
──李 相日監督

劇中で『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』を踊る喜久雄(吉沢亮さん)。

劇中で『京鹿子娘二人道成寺(きょうかのこむすめににんどうじょうじ)』を踊る俊介(横浜流星さん)。
──2025年6月の公開以来、興行収入や動員の記録を次々と更新し、日本はもとより海外でも感動の波を巻き起こしている映画『国宝』。李 ありがたいことにあちこちに取材や舞台挨拶に呼んでいただいています。公開されたら少しは休めるかと思っていたのに休みなし(笑)。
鴈治郎 僕は歌舞伎指導として、また出演者として現場にいましたが、いざ完成した作品を見た時には映像や演出、音楽の力に圧倒されました。歌舞伎の舞台とはまた違う、監督が創り出した世界です。
李 歌舞伎を舞台にした映画ですが、同時に、歌舞伎俳優の生き様を描く映画にしたかったんです。
鴈治郎さんは歌舞伎指導に加え、東京を拠点とする歌舞伎俳優、吾妻千五郎役でも出演。

劇中の舞踊『二人藤娘』の撮影現場での李 相日監督。

喜久雄役の吉沢 亮さんに歌舞伎指導する鴈治郎さん。「人間国宝にまでなる役ですし、歩き方から姿勢、動き、普段の佇まいからもちろん台詞の言い回しまで、お客様が違和感を覚えないよう、歌舞伎を知る人が見ても不自然に感じられないように、細部にまで助言しました」。
カメラとともに観客も演者の心の内に迫る
鴈治郎 撮影の仕方や繫ぎ方も素晴らしかった。昔、歌舞伎のニューヨーク公演で六代目中村歌右衛門のおじさまが『隅田川』を踊られた時に、カーテンコールでおじさまの後ろから客席を撮った写真を見たことがあるんです。そんな普段客席からは見ることができない、我々役者が舞台に立っている時の目線での光景も、お客様には新鮮だったかもしれないですね。アップを多用しながら違和感がないのもすごい。
李 舞台に立つ演者の目線から、カメラとともにどんどん演じる側に意識をフォーカスさせていく。『曽根崎心中』で喜久雄が代役を勤めた場面も、彼が重圧や自我を忘れお初になりきっていく様を、カメラが寄っていくことでその内心に肉迫していくように描きたいと思いました。
鏡台に向かい顔(化粧)をする喜久雄。

劇中の舞踊『二人藤娘』の喜久雄と俊介。