特別取材・小堀家の年末年始 遠州茶道宗家のお正月迎え 江戸時代初期の大名茶人・小堀遠州を流祖とする遠州流茶道。約440年もの歴史を持つ当家を率いるのは、十三世家元・小堀宗実さんです。昨年、ご長男・宗以(そうい)さんが禅寺での修行を終え、本格的に茶の湯の稽古を始めました。家族揃って、和やかかつ厳かに迎える年末年始を取材します。
点初めの日を迎えて
初春の光をまとう“綺麗さび”の道具組み
新春の佳き日に行われる「点初め」は、遠州茶道宗家にとって一年の始まりを告げる大切な行事です。その年の勅題や干支にちなみ、遠州流らしい「綺麗さび」の精神を映した道具が取り合わせられます。
主菓子の紅白饅頭と干瓢(かんぴょう)。干支の焼印が押された杉木地皿は新年にあらためたもの。

家元が干支にちなんでデザインした令和8年の袱紗。草木が生い茂る中に躍動感溢れる3頭の馬を配した意匠「勇馬文」には、新年の飛躍を願う心が込められている。左から曙紅、天青、檜皮色の3色。
「遠州流の綺麗さびは、明るく、豊かで、誰からも美しいと思われる調和の美を目指すものです」と家元。
掛物「顕々露々」は若宗匠が修行した大徳寺龍光院の開祖江月和尚の筆。中廻しと風帯の裂は江月和尚の九条袈裟と同じ団龍金襴。花は曙椿と老木の白梅、若木の紅梅。道具組みは2025年の点初めのもの。
床の掛物は「顕々露々(けんけんろろ)」。大徳寺龍光院(りょうこういん)の開祖、江月宗玩(こうげつそうがん)和尚の筆で、「明らかに露(あらわ)れ、少しも隠すところがない」という意を持ちます。表装には江月和尚ゆかりの裂が用いられています。新春らしい曙椿と紅白梅を入れた家元自作の青竹花入が、凜とした生命をたたえます。
透かし入りの寄木棚は家元の古稀にちなんで7種の木を用いたもので、地板は七角形。2代井川信斎作。茶入の仕覆は流祖が西陣に特注して織らせた金襴、小堀裂。茶碗は遠州好みの「夢」の字茶碗。
格調高い寄木棚は、家元が古稀の折にあつらえたもの。茶入は中興名物の瀬戸正木(せとまさき)を本歌とする「曙」、仕覆は小花紋と小堀家の家紋の七宝紋が織り込まれた小堀裂です。
点初めの濃茶席では家元が濃茶を練り、若宗匠が伴頭を務める。茶碗を介して親子が遠州流茶道に向き合うとき、茶室には厳かな空気が広がる。客席の視線は、家元と若宗匠のやり取りに集まる。
茶碗は「夢」の字茶碗。流祖が釜山窯に切形を送り、自ら「夢」の字を記して完成させた高麗茶碗で、遠州公の理想を象徴する名品です。
正客の濃茶を練る家元。
「綺麗さび」の精神と華やぎが融け合う点初めの席には、時を超えた遠州流の美が息づいています。
2月号から小堀宗以さんの連載「遠州茶道宗家若宗匠 茶の湯の道を往く」が始まります。
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