特別取材・小堀家の年末年始 遠州茶道宗家のお正月迎え 江戸時代初期の大名茶人・小堀遠州を流祖とする遠州流茶道。約440年もの歴史を持つ当家を率いるのは、十三世家元・小堀宗実さんです。昨年、ご長男・宗以(そうい)さんが禅寺での修行を終え、本格的に茶の湯の稽古を始めました。家族揃って、和やかかつ厳かに迎える年末年始を取材します。
点初(たてぞ)めに向けて
静寂の中に息づく美。遠州茶道宗家の新春支度
点初め(初釜)の準備は、12月から始まります。まず露地では「敷き松葉」。霜から苔を守るため、枯れた松葉を遠州好みの市松模様に敷き詰めます。
濃茶席となる小間・成趣庵の露地では12月から2月上旬まで、苔を寒さから守るために市松模様の「敷き松葉」が施される。
「松葉はまっすぐな葉を選び、今年の葉と去年の葉を分けて用います。退色の違いで変化をつけるためで、選別から敷き込みまで5時間ほどかかります」と若宗匠。
冬空の下、竹林の急斜面で真竹を切る若宗匠。花入に向く真竹を家元とともに吟味し、慎重に切り出す。
年の瀬が近づくと、家元と若宗匠は関東某所の竹林へ向かい、急斜面の真竹を命綱一本で切り出します。青竹で花入を作るのは、宗家代々のしきたり。雪割れの線を景色とした青竹花入は生命力に満ち、新春の床に凜とした命の輝きを添えます。
五色の紐で固定した柳の結び目には、蟬の志野袋が飾られる。掛物は祥雲の字と寿老人。
広間には、結び柳が飾られます。結び柳は「再び巡ってもとに帰る」という中国の故事に由来し、新年の門出を寿ぐ象徴。根締めの水仙は、遠州公もこよなく愛した花です。
「茶杓は一刀で長く削るように心がけ、節の部分だけ細かく削ります」と家元。竹を矯た めてから削り上げるまで2時間以上かかる。先般茶杓を初削りした若宗匠は「一刀の違いに個性が表れます」と語る。
一月一日には点初めで用いる茶杓削りが行われます。
毎年新年に削る茶杓の銘は、歌会始のお題にちなんでつけられる。2026年の初削りの茶杓の銘も、お題の「明」にちなんだもの。流麗な定家様で半紙に下書きをしてから、桐箱にしたためる。
削った茶杓に、家元がその年の歌会始のお題にちなんだ銘を付け、箱にしたためます。
葉付きの青竹花入に柳と根締めの水仙を入れる作業は、二人がかり。若宗匠が花入をしっかり支え、家元が柳の枝を整えながら結んでいく。柳の枝は、点心席となる合ごう親しん亭ていの座敷の床いっぱいに広がる。
敷き松葉、青竹花入、結び柳、そして茶杓削りと箱書き──。流祖・小堀遠州の美意識を今に継ぐ点初めの支度は、家元と若宗匠によって粛々と進められます。
(次回に続く。)
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