連載「いのちに想う」12月 行動
ヒト
文=小林朋道(公立鳥取環境大学学長・動物行動学者)野生生物は気高く噓はつかないという認識は改めるべきだろう。
縄張りをめぐって他個体を殺すこともあるし、捕食者はいないのに警戒音を発して仲間を退散させ、餌を独り占めすることもある。
それが生物であり、人間も生物だ。人間は、野生生物のつながりを中心にした生態系から、酸素や水、生存可能な気温など、生命に不可欠な基盤を提供してもらっていながら、その生態系を破壊してきた。
同時に生きる意味を問い、「基本的人権」や「環境保全」を考え出した唯一の生物も人間だ。私は人間を信じている。
「地球温暖化は人間のせいではない」とか、「環境問題を叫びながら自分たちの懐を肥やそうとする人間に騙されてはいけない」と主張する、いわゆる懐疑主義の人々が日本にも少なくない。
私は思う。なんと心の狭い人たちか、と。確かに環境保全を掲げて間違った取り組みを、そうと知らず、あるいは意図的に進めようとすることもある。
現在の地球温暖化に人間活動が関与していることは明らかだ。そんな間違いも犯しつつ、自分の愛する人たちのため、大きな目標に向かって行動する人間という生物が、私は好きだ。
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