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12月の志野結びは「雪持笹」。“冬月香(とうげつこう)”の聞き方とは【季節の香りを聞く】

2025.12.06

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写真/sakura(ピクスタ)

連載「季節の香りを聞く」12月〈志野袋〉雪持笹

冬月香(とうげつこう)

朝ぼらけ有明の月と見るまでに
吉野の里に降れる白雪

古今和歌集──坂上是則──

写真下/本誌・大見謝星斗

写真下/本誌・大見謝星斗


選・文=蜂谷宗苾(志野流香道 第21世家元)


若い頃、奈良の山中に身を置いておりました。毎朝4時に本堂の樒(しきみ)の水を取り替え、ご老師様を坐して待ちます。

いずれ、遠くの方から二枚歯の下駄の音が鳴り響いてきますが、何か悪戯をして叱られる訳でもないのに心拍数が上がるのは、子供の頃悪さばかりしてきたせいでしょう。

坐禅から粥座へ。

白み始めた空には雪がちらつき、寒気に浮かぶ冴え冴えとした冬の月がこちらを見下ろしています。

お香は、霜・雪・氷・月の4種、合計10炷、五感で冬季を感じ取ります。是則の言う月と見違えるほど降り注ぐ雪の光は、詩歌を通し千年の時を超え、私たちの心まで照らしてくれます。

「月は月として認識しなければ存在しない」とインドの思想家タゴールは言いました。月を原子の塊と見ず、いつまでも私たちの心に美しい姿のまま残り続けますように。

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『家庭画報』2025年12月号

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