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名字「蛭子」を「えびす」と読むのはなぜ?古代の神話と信仰に由来します

2026.01.29

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墨アート製作/越智まみ

名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

難読名字:蛭子(えびす・えべす・ひるこ)

「蛭子」という名字はみたことがある人が多いと思います。漫画家でタレントの蛭子能収(えびす・よしかず)さんが有名なので、多くの方は「えびす」と読めると思いますが、漢字とはあまり対応しておらず、難読の名字といえます。また、読み方も「えびす」が圧倒的に多いものの、「ひるこ」「えべす」とも読みます。

最も多い読み方の「えびす」は名字ランキングでは6000位台で、メジャーな名字ではないものの、珍しいというわけではありません。

さて、「蛭」という漢字の本来の読み方は「ひる」で、人や動物の血を吸うヒルのことです。ではどうして「蛭子」と書いて「えびす」と読むのでしょうか。


「えびす」というと、七福神の一つの恵比寿様を思い浮かべます。古代、漁村では異郷から訪れて漁をもたらす神として信仰を集める「えびす信仰」がありました。

一方、『古事記』には3年たっても足が立たなかったので葦舟に乗せて流したという蛭子(ひるこ)が登場します。

この蛭子は後に摂津国西宮の浦(兵庫県西宮市)に流れつき、そこで祀られてえびす神となりました。現在西宮神社は全国に約3,500社あるえびす神社の総本社となっています。

こうして「えびす」と「蛭子(ひるこ)」は同一視され、「蛭子」と書いて「えびす」と読むようになったのです。

「蛭子」は、こうした蛭子信仰に関わる人が名乗った名字だと思われます。

そして、「えびす」にはいろんな漢字があてられるようになりました。最も多いのが「戎」で、次いで数が多いのが「蛭子」です。

また、「蛭子」も、半数以上が「えびす」と読むものの、各地に点々と「ひるこ」と読む名字があります。さらに高知県東洋町では「えべす」と読み、関東地方では「えびこ」も点在しています。

・ほかの名字の由来も読む>>


森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/
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