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3つの読み方をもつ名字「東」。それぞれ由来が異なります

2026.01.08

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墨アート製作/越智まみ

名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

東(ひがし・あずま)

「東」という名字は全国に広く分布しており、知り合いにいるという方も多いと思います。ではこの名字をなんと読んでいるでしょうか。「東」は大きく「ひがし」と「あずま」に分かれ、いずれもメジャーな名字です。この他にも、数は少ないですが「とう」と読む方もいます。

さて、「東」は方位に因むものです。

本家や村の中心地からみて東の方角にあった家に住んでいる人が名乗ったものです。しかし、ただ「東」といっただけでは、どこに住んでいるのかよくわかりません。実は「東」「西」「南」「北」という方角の漢字一字だけの名字は、分家が多いのです。本家から分家し、本家のすぐ東側に新しく家を構えると「東(ひがし)」と名乗りました。


こうしたことは各地で行われたため、「東(ひがし)」は全国に広く分布しているのです。

では「東(あずま)」は何に由来するのでしょうか。

「あずま」とは京からみた「あずま」、いわゆる東日本を指しています。古い時代には東海・北陸から東はすべて「あずま」でしたが、次第に関東地方を「あずま」というようになりました。そのため、関東地方出身という意味で「東(あずま)」と名乗ったものです。

また、昔は分家すると読み方を変えるということもよく行われました。そこから東(ひがし)家の分家が名字の読み方を「あずま」に変えたものも多いと思います。

「東(とう)」は由来がはっきりしています。

平安時代、桓武平氏の千葉常胤の六男胤頼が香取郡東荘(とうのしょう、現在の千葉県香取郡東庄町)を領して東氏を名乗っています。この東氏が「とう」と読むのです。

一族は鎌倉時代に美濃国(現在の岐阜県)に転じて栄えました。戦国時代に遠藤氏が継承し、江戸時代には近江三上藩主となりました。明治時代になると遠藤氏は名字を「東(とう)」に戻しています。

現在、近畿地方を中心に、東は岐阜・石川県、西は徳島・香川県までの範囲は「ひがし」の多い県と「あずま」の多い県が混在しています。それより東では茨城県を除いてすべて「あずま」が多く、新潟県や北海道では9割近くに及んでいます。

一方、それより西では沖縄県を除いてすべて「ひがし」が主流で、とくに「東」の集中している熊本県と鹿児島県では、95%前後が「ひがし」と読みます。

全国を集計すると「ひがし」がやや多くなっています。

・ほかの名字の由来も読む>>


森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/
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