金継ぎで繕うことで器と人との関係が深まる
教室の飾り棚の前で。棚に置かれているのは、蒔絵の棗や金継ぎなどの松田さんの作品。二階堂さんが手にしているのは、松田さんが恩師から譲り受けて継いだという、野々村仁清作の向付。
二階堂さんのきものは、郡上紬。帯は、群馬県富岡産の「ぐんま黄金」の繭を糸座繰りした糸で織った帯地に、染色作家の仁平幸春さんが染めを施した工房フォリアの染め帯、半衿は手描き更紗、帯締めは藤岡組紐店の琴柱組、草履は一脇の木草履、バッグは茶籠と更紗の布を組み合わせたもの/すべて石田節子呉服店
二階堂 今日は、いつか金継ぎしたいと思い、手もとに置いていた器を持って参りました。私は古い器も日常でどんどん使ってしまうので、欠けたりひびが入ったりすることが多く、お恥ずかしいのですが……。
二階堂さんの器
上の3つは知人から譲り受けたり、自身で購入したりした骨董。中央はバラバラに割れた白い器。下は、同じ事務所のアーティストからもらったノベルティグッズ。
松田 お好きな器をしまい込まずに日々お使いになるのは、とてもよいことだと思います。金継ぎで繕うことができますからね。
二階堂 繕うことで、もう一度、その器と出合い直すといいますか、繫がりが深まりますね。白い器は、落として割れてしまったのですが、ここまでバラバラでも金継ぎで直すことができるのでしょうか。
松田 もちろんできますよ。こうして、こうして……(と次々に破片を組み合わせる)。
「繕ったものには心に響く味わいがあります」──松田祥幹
蒔いた金を払う松田さんの作業を目前で見学。
二階堂 パズルみたいで面白いですね。同じ事務所のアーティストの方からいただいたノベルティグッズの小皿もそうなのですが、骨董や作家ものなどの古くて高価なものではない、こうした現代の器も、金継ぎをすることで自分だけの特別な器になるような気がします。
松田 おっしゃるとおりですね。私はパリやニューヨークで金継ぎ教室を開催したことがありますが、お父さまの形見のマグカップなど、思い出の品を金継ぎしたいという方がたくさんいらっしゃいました。直して使い続けることによって、持ち主との関係や思い出も深まります。
二階堂 今日お持ちした古いものは知人から譲られたものですが、その方との関係性も、改めて深まるような気がします。
松田 色や形がきちんと揃ったものには西洋的な美しさがありますが、欠けやひびを繕った不揃いのものにも、心に響く味わいがあり、そこに日本の情緒や美意識の奥深さを感じますね。
二階堂 今日は私がお持ちした器のうちのひとつを試しに直していただきました。金粉にもさまざまな種類があるのですね。
お母さまが割ってしまったという、江戸時代の蛸唐草を松田さんが継いだもの。
松田 「蒔絵粉」というのですが、粒の大きさや光沢によって数種類あります。今日お見せしたのは「平目粉」と呼ばれる、通常の丸い粒の金粉を潰して小判状にしたもので、キラキラとした輝きが特徴です。さらに銀継ぎ、錫継ぎ、プラチナ継ぎなどもあります。手法としては、異なる器の破片を組み合わせる「呼び継ぎ」も面白いですね。また、直した跡がまったくわからないように継ぐ「共継ぎ」もあります。
安土桃山時代の唐津焼の片口を「呼び継ぎ」にした松田さんの作品。継いだ跡に蒔絵が施してある。
網紋のそば猪口。金継ぎした箇所には、本物の玉虫の羽で鱗紋が施されている。
二階堂 いつか私も習ってみたいと思っています。
松田 何も考えずに作業に集中するので、リフレッシュ効果もあります。ぜひお待ちしています。
「どんな器でも、金継ぎをすることで自分だけの器になりますね」──二階堂ふみ
デルフトの器が並ぶギャラリーにて。二階堂さんが手にしているのは、松田さんが金継ぎした約800年前のペルシャ陶器。
松田祥幹 蒔絵・金継ぎ教室東京都中央区築地2-8-10築地K&R Ⅱ TODAビル5階
インスタグラム(
@makie_school_ginza)
https://www.makieshi.com/
二階堂ふみ(にかいどう・ふみ)俳優。1994年沖縄県出身。2009年映画『ガマの油』でスクリーン・デビュー。2024年『SHOGUN 将軍』で落葉の方を、2025年第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品『遠い山なみの光』で佐知子を演じている。
※2026年度は不定期連載となります。