連載「いのちに想う」11月 樹上
ヒメネズミ
文=小林朋道(公立鳥取環境大学学長・動物行動学者)ヒメネズミという名の野ネズミは、体重がハツカネズミと同じ25グラム程度。外見がよく似た体重40グラム程度のアカネズミより一回り小さい。
これら3種のネズミの中で樹上を利用するのはヒメネズミだけ。11月は、春と秋に繁殖期をもつヒメネズミの、その年最後の繁殖可能時期。秋には、樹の地上6メートル地点に設置したニホンモモンガ用の巣箱の中に、ミズナラのドングリを大量に貯蔵したり、巣材を持ち込んで出産・育児をしたりすることもあった。
一度、独り立ち直前くらいの仔ネズミが巣箱の中に5、6匹いて、私がそうとは知らず手を入れたことがある。
仔ネズミたちは巣箱から飛び出して6メートル下の地面にダイブした。ただし、四肢を水平に大きく伸ばし、モモンガの滑空の時のような格好で、大きな空気の抵抗力を味方につけ、ゆっくり落下していった。怪我はしなかっただろう。素晴らしい。上から見ていた私は心の中で拍手した。
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