連載「季節の香りを聞く」11月〈志野袋〉水仙
時雨香(しぐれこう)
木の葉散る宿は聞き分くことぞなき
時雨する夜も時雨せぬ夜も後拾遺和歌集──源頼実──
写真/本誌・大見謝星斗
選・文=蜂谷宗苾(志野流香道 第21世家元)この組香は、源頼実が詠んだ晩秋から初冬にかけて降る「時雨」を題材にした歌に拠って組まれています。
風が吹く度、木の葉が時雨の如く屋根に音を立てるこの家では、時雨が降る夜も、降らない夜も、果たしてその音は時雨なのか、落ち葉なのか聞き分けることができない、というのです。
香は五種を二包ずつ用意し二組に分けます。前半の五包を基準にし、後半の五包を聞き当てることで、木の葉の音と時雨の音を聞き分ける趣向にしてあります。
今夏は、後世に語り継がれるくらいの酷暑だったのではないでしょうか。春と秋が随分短く感じます。日本の美しい四季の移ろいをどうしたら守れるのか。春雨、白雨、村雨、時雨がなくなり、スコールでは悲しい。日々の聞香を通し、どう生きるべきか自問しております。
~志野流組香 三十組-二十八番~
写真/mico(ピクスタ)
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