数百年後まで残る奥深く、幅広い“芸”
昔の寝具をアートピースとして現代に甦らせた夜着『孔雀』の前で、左から、純恵さん、敏明さん、二階堂さん。
絹糸だけでなく、金糸や銀糸などを用いた京繡の技法は、約30種類におよぶといわれています。
二階堂 以前、フランスの老舗メゾンの刺繡工房を訪ねて見学したことがあるのですが、国によって、やはり随分違うものですね。
長艸 そうですね。京繡では針の太さだけでも世界では珍しく15種類ほどあります。極めて細い針と糸で繊細な表現をすることも、京繡の特徴の一つといえます。
長艸純恵さん(以下、純恵) 色鮮やかな印象の作品が多いのですが、よく見ると、暗い色、濁った色の糸も使われているのがわかります。これは長艸ならではの色彩感覚なのでしょうね。
二階堂 図柄が立体的に見えるのは、そうした理由もあるのですね。制作中の手もとを拝見すると、一針ごとに、図柄に命が吹き込まれていくかのようでした。なんという技術、なんというお仕事だろう、と。
長艸 100あるうちの、10か20をそっと出す。それが、京都のものづくりです。
二階堂 それゆえに、作品に奥深さが感じられるのですね。
純恵 この夜着『孔雀』(上記写真)は、掻巻(かいまき)とも呼ばれた、きもの状の昔の寝具を現代に甦らせたオリジナルの作品です。
長艸 購入してくださるのは、海外の方が多いですね。作品は、人の手に渡ることによって、より大事にしてもらえます。数百年後まで残る作品を目指しながら、どこまで自由になれるか。根底にあるものは技術ですが、加えて、芸の深さと幅が必要やと思っています。
二階堂 純粋に鑑賞するための、アートピースとしての京繡がすでに世界に広まっているのですね。これからも楽しみです。
「一針ごとに、図柄に命が吹き込まれていくようでした」── 二階堂ふみ
軸装された作品が並ぶ廊下にて。二階堂さんの正面の作品は青紅葉を表現した『新緑』。バッグなども展示されている。
二階堂ふみ(にかいどう・ふみ)俳優。1994年沖縄県出身。2009年映画『ガマの油』でスクリーン・デビュー。2024年ディズニープラスのオリジナルドラマ『SHOGUN 将軍』で落葉の方を、2025年第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品作品『遠い山なみの光』で佐知子を演じている。