名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:西表(いりおもて)
「西表」と書いてどう読むかわかるでしょうか。
西表島と書いてあると「いりおもてじま」と正しく読める人は多いのですが、「西表」までだとつい「にしおもて」と読んでしまうことが多いのではないでしょうか。
鹿児島県種子島には西之表(にしのおもて)市という市もありますが、「西表」は沖縄県の名字です。
さて、西表島は沖縄本島のさらに南西に連なる先島諸島のうち石垣島の西側にあり、八重山列島の中で最も大きな島です。
島のほぼ全域が西表石垣国立公園に属し、河口にはマングローブ林が広がり、特別天然記念物のイリオモテヤマネコやカンムリワシが生息するなど、自然豊かな島として知られています。
この島を「いりおもてじま」と読むように、「西表」という名字の読み方は「いりおもて」です。
では、どうして「西」を「いり」と読むのでしょうか。
沖縄では、朝、太陽は海から上がってきます。そこで、東の方角のことを「あがり」と読むことは以前
「東江(あがりえ)」の記事で紹介しました。そこから生まれた名字は「東江」の他にも、「東里(あがりさと)」「東門(あがりじょう)」「東筋(あがりすじ)」などたくさんあります。
夕方になると、太陽は西の海に入っていきます。ここから西の方角を「いり」といいます。従って、「西表」と書いて「いりおもて」となるのです。
「西表」という名字は、もちろん西表島に由来するもので、現在は近くの石垣島に集中しています。
また、「東(あがり)」と同様、「西」を「いり」と読む沖縄県の名字は「西表」の他にも多く、「西門(いりじょう)」や「西筋(いりすじ)」などがあります。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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