名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:御手洗(みたらい)
「御手洗」という名字があります。名字ランキングでは3000位以内なのでメジャーな名字なのですが、分布が偏っているため直接会ったことがある、という人は少ないかもしれません。
この「御手洗」という言葉、今ではトイレの丁寧な表現「おてあらい」の漢字として使われているため、名字でも誤読されることがあるようです。しかし、「御手洗」は「みたらい」と読み、本来は全く別の意味です。
神社に参拝する前に、参拝者が手や口を浄める場所があります。通常は水が張られた水盤に柄杓がおいてある手水舎(てみずや/ちょうずや)ですが、大きな神社では川の流れなどを利用した「御手洗」があり、多くは「みたらし」といいました。
伊勢神宮の御手洗
伊勢神宮では内宮参道の右手のゆるやかな斜面を下りた先の五十鈴川のたもとに石畳を敷き詰めた御手洗場(みたらしば)があり、ここで手を浄めることができます。
下鴨神社の御手洗
京都の下鴨神社にも御手洗川と御手洗池があります。この水は銘水として知られ、「御神水」として社務所でも販売されています。また、みたらし団子は、この御手洗池に因んでいます。
こうした神聖な御手洗(みたらし)から生まれたのが、「御手洗」(みたらい)という名字なのです。
「御手洗」にはもう1つ別のルーツもあります。
それが、瀬戸内海に浮かぶ広島県呉市豊町の大崎下島東端にある「御手洗」という地名に因むものです。
この地名は、神功皇后がこの地で手を洗ったことに因む(諸説あります)といわれる地名で、江戸時代には西廻航路の風待ち、潮待ちの港となり、瀬戸内海の海運の重要な湊町として発展しました。現在では重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
現在は大分県に多い名字で、とくに佐伯市に集中しています。御手洗湊は九州の大名が参勤交代でも利用しており、関係がありそうです。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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