カルチャー&ホビー

歴代首相2人の名字「菅」。2つの読み方はルーツが異なる

2025.11.19

  • facebook
  • line
  • twitter

墨アート製作/越智まみ

名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

難読名字:菅(かん・すが)

現在の高市首相は第104代の総理大臣です。しかし、複数回つとめた人がいるため、人数でいうと全部で66人となります。

この66人のうち、佐藤首相や高橋首相は1人しかおらず、渡辺首相はまだ誕生していません。ところが、菅首相は2人もいるのです。鳩山首相や福田首相のように一族というわけではなく、しかも菅直人首相は「かん」と読み、菅義偉首相は「すが」です。

同じ漢字で読みが違う名字の場合、分家した家が読み方を変えたということが多いのですが、「菅」の場合はもともと別ルーツだった可能性が高いのです。


平安時代、朝廷の有力貴族に菅原氏がいました。藤原氏ほどではありませんが、菅原道真なども出た有力貴族の一つです。

この時代、世界の最先進国は中国ですから、当時の貴族たちは中国風にあこがれ、自らの姓を中国風の漢字一文字にして音読みで呼ぶことがありました。つまり、藤原氏は「藤(とう)家」、清原氏は「清(せい)家」といい、菅原家は「菅(かん)家」といったのです。

ここから、菅原氏の子孫は「菅(かん)」を名乗ったものが多く、戦国時代には淡路島に菅原氏の末裔の菅氏という戦国大名もいました。

では、「すが」のルーツはなんでしょうか。

カヤツリグサの仲間に「スゲ」という植物があります。現在ではあまりなじみのない植物ですが、古代では日常生活に深く結びいており、『万葉集』では萩、アシに次いで多く49首も詠まれています。

またスゲを編んでつくる菅笠の他、蓑や縄などスゲの利用価値は高かったのです。この「スゲ」に漢字をあてたのが「菅」で、現在では名字としては「すが」と読むことが多く、「すげ」とも読みます。

スゲは湿地帯に多い植物で全国に広く分布していたことから、「菅(すが)」さんは全国に広く分布しています。

一方、「菅(かん)」さんは菅原氏の末裔が住みついいたところに多いため、愛媛県を筆頭に、山形県、熊本県、岩手県など集中しているところが限られているのです。従って、多くの地域では「菅」は「すが」と読むのが多数派です。

しかし、愛媛県には「菅」という名字が非常に多いうえ、実にその98%が「かん」と読むため、全国をトータルすると「すが」と「かん」はほぼ半数ずつ、「すが」がやや多い、という程度になっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/

セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細はこちらから>>
  • facebook
  • line
  • twitter

12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2025 / 12 / 08

他の星座を見る

Keyword

注目キーワード

Pick up

注目記事
12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2025 / 12 / 08

他の星座を見る