名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:光(ひかる)
「光」という漢字一字の名字があります。珍しい名字なので実際に会ったことがある、という方は少ないと思います。もし会ったら、初見ではどう読むでしょうか。
この名字、「ひかり」とも読みますが、信濃にはかつて古い由緒を持つ「ひかる」と読む一族がいました。こうした動詞が名字となっているのは極めて珍しいと言えます。
「光(ひかる)」という名字は地名に由来しています。
ルーツの地は現在の長野県安曇野市豊科光で、地名が「ひかる」と読むのです。かつては信濃国安曇郡光村といい、ここに住んだ一族が「光」を名字としたのが祖です。
では、「光」という地名は何に由来しているのでしょうか。
この地名は、古代に伝達のための狼煙(のろし)をあげていたことに因むといわれています。古代、狼煙のことを烽(とぶひ)といい、敵の襲来など急を要する伝達は烽で伝えることになっていました。奈良時代には約20キロごとに烽台が設置されていたといいます。
光村は鎌倉時代には光氏が支配していたといいます。室町時代の資料には飛賀留氏と書かれており、「光」は「ひかり」ではなく、当時から「ひかる」と呼んでいたことがわかります。昔の資料にはルビはありませんから、使われている漢字から読み方を知ることができるのです。
光氏は戦国時代には仁場城(光城ともいう)に拠って、信濃の有力大名である小笠原氏に従っていました。江戸時代になると小笠原氏の転封に従って、豊前国中津(現在の大分県中津市)に転じています。
なお、現在は鹿児島県種子島の中種子町に「ひかり」と読む「光」さんが集中しており、「ひかる」と読む「光」さんは少数派です。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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