──光源氏の高貴で大きな存在感が、声からも伝わってきました。染五郎 お兄様が、舞台においての声の出し方や、気持ちをどうやったら音にのせてお客様に届けられるかということを、突き詰めて教えてくださったんです。ひと言のセリフにも無限にいい方があるのだと、改めて感じました。
玉三郎 彼はもともといい声を持っているから、少しお手伝いしただけです。そもそも、歌も素晴らしいおじいちゃま(松本白鸚さん)の遺伝子を持っていますからね。歌はやらないの?
染五郎 カラオケに行っても、歌うことはあまりないです。ただ、祖父はやっぱり憧れの存在ですので、歌のお仕事に興味がないことはないです。
玉三郎 こうして見ると、お顔もおじいちゃまの若い頃にそっくりよね。私は白鸚さんとずっと一緒にやってきて、染五郎くんとは2世代違うから、最初は彼もやりづらいところがあったと思うんです。でも幕が開いたら、それを取っ払えているように感じました。これは、とても大事なことです。
染五郎 それは、お兄様が楽屋でもお話ししてくださって、役としての距離感を作ってくださったことが本当に大きいです。
「光源氏をこんなに早くやらせていただけるとは思いませんでした」──染五郎
──光源氏の役を、玉三郎さんのお相手で演じるとお聞きになったとき、染五郎さんはどう思われたのですか?染五郎 もうびっくりしました。まず、光源氏をこんなに早くやらせていただけると思っていなかったですし、前の月の『吉野川』に続いて2か月ご一緒させていただけることもありがたくて。
玉三郎 私も、まさかこういう形で共演するとは思っていなかったんです。もちろん以前から一緒に出てはいましたけど、まだ子どもなんだなと思っていましたから。でも、博多座公演を観に行ったとき……あれは何月?
染五郎 昨年の2月です。
玉三郎 そのときに、こんなに大人になったんだと思って、そこで急遽、一緒にやりましょうとなって。
染五郎 『源氏物語 六条御息所の巻』でご一緒させていただいた後も、お兄様は新春浅草歌舞伎や『朧おぼろの森に棲む鬼』を映像で観てくださって、アドバイスもいただいたんです。こんなにありがたいことはないです。
「歌舞伎界の次代を担っていくのは彼らの世代ですから」──玉三郎
玉三郎 やっぱり気になりますからね。染五郎くんは、学生をやめて舞台に専念すると自分で決めたでしょ。それがよかったなと思っていて。俳優は人にいわれてなるものじゃなくて、自分でどうするか決めることが一番大事だから。それに、歌舞伎界の次代を担っていくのは、彼らの世代ですからね。彼らが歌舞伎座の真ん中に立って、お客様に大勢来ていただき、いいものをお見せするということに、私は懸けているんです。
・後編へ続く。
後編を読む→
玉三郎さんは監修協力も担当。「平安時代のことは資料を見てもよくわからなくて。なので思い切って、抽象性のある舞台美術にしました」。
シネマ歌舞伎『源氏物語 六条御息所の巻』
『源氏物語』が原作の昨年の人気作を、高性能カメラで撮影。編集を経てついにスクリーンに登場する。時は平安の世。光源氏(染五郎)の子を宿した葵の上(中村時蔵)は謎の病に臥していた。一方、光源氏は年上の美しき愛人・六条御息所(玉三郎)のもとを久々に訪れるが……。
2025年9月26日(金)全国公開 製作・配給/松竹
脚本/竹柴潤一 監修/坂東玉三郎 演出/今井豊茂
出演/坂東玉三郎 市川染五郎 中村時蔵 中村歌女之丞 中村亀鶴 坂東彌十郎 中村萬壽ほか(令和6年10月歌舞伎座公演)
©松竹株式会社(
次回へ続く。)