日々の暮らしを豊かにする“引き算”の江戸切子
工房では、実際にカッティングにも挑戦した二階堂さん。
切子職人はガラスにカッティングを入れることを「切る」と呼ぶそう。集中力を高めてガラスのトレーを「切って」いる二階堂さん。
二階堂 体験して、「切子」は作る人の“呼吸が入っている”ものなのだと感じました。人間の手の早さで作られているので、作り手の思いが伝わりやすいですね。
堀口 作り手としては、使う人が感じる美しさや心地よさのピークをどこに設定するかを考えています。見た瞬間なのか、飲み物を飲み終えたときなのか、それとも余韻なのか。使い手の想像の余地のために、引き算することも大切です。
二階堂さん作の切子のトレー。初めてとは思えない出来栄え。
二階堂 そもそも「江戸切子」は、何をもってそう呼ばれるのですか?
堀口 定義は、ガラスであること、手作業であること、おもに回転道具を使用すること、東京近郊で生産されていることの4点のみ。色やデザインは自由なので、とても幅が広いものなのです。実は伝統工芸のなかでは比較的新しく、約190年しか歴史がありません。
右は切る前のグラス。左はカッティングを施した完成品。
右は、握って手を冷やすことで体のほてりを鎮める「ハンドクーラー」。19世紀のヨーロッパで使われていた道具も、堀口さんが作れば「江戸切子」に。中央は「グラス・しずく」、左は「よろけ縞・タンブラー」。いずれも公式サイトで購入可能。
二階堂 シンプルなグラスも「江戸切子」なのですね。
堀口 普段づかいできるものがあるのも、大きな特徴です。
二階堂 水を飲むグラスがこの切子だったら、どれほど日々の暮らしを味わい深いものにしてくれるだろうかと思います。

堀口 “贅沢”とは少し違う、人生を豊かにするものだといえます。
二階堂 「江戸切子」は、想像していたよりも自由。未来への可能性を感じさせてくれました。
二階堂ふみ(にかいどう・ふみ)俳優。1994年、沖縄県出身。2009年、映画『ガマの油』でスクリーンデビュー。2024年『SHOGUN 将軍』では落葉の方を演じる。2025年9月5日公開予定の日・英・ポーランド合作映画『遠い山なみの光』では、物語の重要な鍵を握る役を演じる。