カルチャー&ホビー

地形由来の名字「渋谷」。分布には源平合戦も関係します

2025.10.22

  • facebook
  • line
  • twitter

墨アート製作/越智まみ

名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

渋谷(しぶや)

「渋谷」と聞いて、まっさきに思い浮かべるのは東京の渋谷だと思います。

平安時代末期、ここには桓武平氏の一族の渋谷氏という武士が住んでいました。渋谷に住んでいるから地名に因んで「渋谷」と名乗ったように見えますが、実は渋谷氏が住んだからここが渋谷という地名になったのです。

そもそも「渋谷」とは地形由来の名字です。


「渋」とは、「渋滞」という言葉に使われるように、流れが澱んでいることをあらわしています。従って、「渋」のつく名字は「渋沢」「渋川」「渋井」など、水に関係するものが多いのです。「渋谷」とは流れの澱んでいる谷を指しています。

渋谷氏のルーツとなった場所は相模国高座郡渋谷荘です。渋谷荘の範囲ははっきりしませんが、神奈川県の綾瀬市や大和市、藤沢市あたりにあり、現在は大和市に「渋谷」地名が残っています。

ここに住んだ平氏の一族が「渋谷」を名字とし、のちに武蔵国に新たな領地をもらいました。そしてそこも谷間地形だったので自らの名字から「渋谷」と名付けたのが東京の渋谷なのです。

渋谷にある金王八幡宮や金王坂は、渋谷一族の渋谷金王丸に因んでいます(金王丸の実在については諸説あります)。

さて、「~谷」という名字は大きく「~たに」と「~や」の2つの読み方があります。「~がい」や「~がや」は、「~や」の変化形です。

そして、この2つの読み方には分布のパターンがあります。一般的に西日本では「~たに」が多く、東に行くにつれて「~や」が増えていくのです。これは「~谷」という地名の読み方の分布と同じ傾向で、この名字が地名と密接な関係があることを示しています。

ところが、「渋谷」は、「~谷」名字の一般的な法則が当てはまりません。

「渋谷」は関西でも「しぶや」が多く、「しぶたに」は1/3ほどしかないのです。中国・四国・九州などでも「しぶや」が多い地域が主流です。これは源平合戦で活躍した関東の渋谷(しぶや)一族が全国各地に所領をもらって広がったのが理由だと思います。

一方、青森県では東北にもかかわらず80%以上が「しぶたに」と読みます。この「渋谷(しぶたに)」はつがる市や五所川原市に多く、関西や北陸から北前船で移り住んだ人達とみられます。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/

セブンアカデミーで越智まみさんの「オンライン書道」墨アートレッスンが開催中。詳細はこちらから>>
  • facebook
  • line
  • twitter

12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 03 / 05

他の星座を見る

Keyword

注目キーワード

Pick up

注目記事
12星座占い今日のわたし

全体ランキング&仕事、お金、愛情…
今日のあなたの運勢は?

2026 / 03 / 05

他の星座を見る