名字の世界 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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鬼頭(きとう)
「鬼」の「頭」と書いて「きとう」と読みます。
愛知県では名字ランキングで100位以内に入るごく普通の名字ですが、その他の都道府県では三重県北部にある程度まとまってあるくらいです。
これだけ特定の地域に集中している名字は、その付近にルーツがあります。
尾張国愛知郡で江戸時代初期に沓掛新田(現在の愛知県豊明市)などを開発した旧家の鬼頭家では、紀伊国の海賊を退治した際に「鬼頭」という名字を賜ったと伝えています。
しかし、すべての「鬼頭」さんがその子孫とは思えません。
そもそも「鬼」とはなんでしょうか。
今では「鬼」は人をさらって食べたりする怪物のような扱いですが、かつては鬼とは里に住む人々とは一線を画した生活をしている人を指したと思われます。海賊も「鬼」だったのです。
つまり、「鬼」とは朝廷を中心とした統治機構の外側にいて一定の実力を有している人達のことで、決して怪物というわけではなかったのだと思います。
そして、山野をかけめぐって超人的な身体能力を持つ修験者のことも「鬼」と表現されたのでしょう。修験道の開祖ともいわれる役行者には、前鬼・後鬼という鬼の夫婦が仕えており、その子孫は「鬼」のつく名字を名乗って現在まで続いています。
紀伊半島は修験者を擁する山岳信仰である熊野信仰の本場で、多くの修験者達がいました。実は「鬼頭」に限らず、「九鬼」「三鬼」など、この付近には「鬼」のつく名字が多いのです。
「鬼頭」はこうした「鬼」のつく名字のリーダー的な役割にあった人達が名乗ったものでしょう。
現在は愛知県の中でも、とくに名古屋市の中川区から港区にかけて集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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