連載「季節の香りを聞く」9月〈志野袋〉菊
菊合香(きくあわせこう)
秋風の吹き上げに立てる白菊は
花かあらぬか浪の寄するか古今和歌集──菅原道真──
選・文=蜂谷宗苾(志野流香道 第21世家元)平安時代、貴族の社交の場で教養や美的センスが問われる物合が行われました。歌合せ、貝合せ、鶯(うぐいす)合せ……もちろん香りの優劣を競い合う薫物(たきもの)合せも。
菊合香は、寛平年間に宮中で行われた菊合せの会で、吹上浜(ふきあげはま)の景色を箱庭のように象った洲浜台(すはまだい)の菊花に対し、菅原道真が詠んだ歌に拠って組まれています。
歌意は、秋の強い風が吹き上げている浜に立っている白菊に見えるものは、果たして花なのか、それとも白波が浜に打ち寄せているのだろうか。秋風の「吹」くと、地名の「吹上」は掛詞。その吹上の浜は和歌山県和歌浦の北に位置し枕詞でもあります。
お香は秋風を4包、白菊を3包用意し、秋風の香りを覚えたあと、道真の自然界に対する心情を感じながら4つの香りを聞き当てます。
~志野流組香 四十組-十七番~

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