〔特集〕最新展示で命の躍動と不思議に出合う 大人が楽しい水族館・動物園 豊かな自然環境のもと、瑞々しい生命の息吹に触れられる水族館・動物園は、人生経験を重ねた大人が改めて学びや癒やしを得られるスポットとして今、注目を集めています。生き物が暮らす環境の再現や、アートのような演出など、非日常感を味わえる展示方法に魅力ある施設を中心に、全国から厳選してご案内します。
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動物たちがすむ地を訪ねる
生息地を再現した動物園へ
[お話を伺った人]若生謙二さん(動物園デザイナー)
若生 謙二さん(わこう・けんじ)大阪芸術大学教授。動物園デザイナーとして全国の動物園で生息環境展示の実現に取り組む。動物園ランドスケープ会議代表、日本展示学会会長。
動物園の風景といえば鉄の檻やコンクリートの壁を思い浮かべるかもしれませんが、近年その有り様は大きく変化しています。私が30年来取り組んでいる「生息環境展示」は、自然環境を可能な限り再現し、動物本来の習性や行動を発揮させようというものです。

自然の景観をつくる展示は、1980年代にアメリカの動物園で進みました。これらを超える動物園の展示をつくりたい、その思いで最初に手がけたのが大阪・天王寺動物園の「アフリカサバンナゾーン」です。
今では主流ともいえる生息環境展示ですが、そもそもなぜ環境を再現する必要があるのでしょうか。 一つは、来園者に動物の生態や生息地域への理解を深めてもらうため。もう一つは、動物が自然に近い環境で過ごせるようにするためです。
例えば霊長類の多くは樹上で暮らしています。 ですから園内に樹林をつくると、彼らは木の上で休んだり、木のしなりを利用して渡ったりします。環境が、本来の姿を発現させるのです。
山口県「ときわ動物園」のシロテテナガザル。長い腕を使って枝から枝へと樹上を縦横無尽に跳び回る。「直線的な人工物にはない、植物特有の “しなり” と高低差がこの動きを引き出しています」(若生さん)。
設計にあたっては、可能な限り動物の生息地域へ赴き、注意深く調査します。これまでアフリカのケニアやウガンダ、南米のアマゾン、インドネシアのスマトラ島、マダガスカルなどを訪ねました。そこで得た知見をもとに、細部まで環境を再現します。
現地に近い植物を植え、水辺や沼地を掘り、起伏や傾斜地をつくる。動物園づくりとはランドスケープをつくることなのです。
動物園は単なる娯楽施設ではなく「生きる博物館」です。動物について知ることは、ひいては人間の暮らしを見つめ直すことに繫がります。動物のいる環境そのものを楽しみながら、学んでもらえたら嬉しいです。
(次回に続く。
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