東北を代表する名家であり、珍しい名字「留守」さん。平安時代中期以降の役職がルーツ

名字365　姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも？知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら＞＞

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留守（るす）

「留守」という名字があります。文字通り「るす」と読み、難読ではありませんが珍しい名字です。各地に点々とあり、このうち東北の留守家は同地を代表する名家でした。

平安時代中期以降、都から遠い国の国司となった貴族たちは、自らは現地に赴任せず代理として家来を派遣しました。こうして派遣された家来を「目代（もくだい）」といい、国司のいない国衙（こくが、役所）を留守所といいました。

そして、広大な陸奥国の留守所を実質的に管理する役職を留守職（るすしき）といったのです。


鎌倉時代初期、源頼朝は藤原道長の兄道兼の子孫と伝える伊沢家景を陸奥国留守職として派遣します。伊沢氏は、以後代々多賀国府に住んで陸奥を支配し、やがて名字を「留守」に変えました。

以来、室町時代まで現在の宮城県で大きな勢力を持ち、戦国時代になって伊達氏が台頭してくると、その勢力下に入ります。

そして伊達氏から養子を迎えて一族に名を連ね、江戸時代には仙台藩重臣として「水沢伊達氏」と名乗りました。現在は「留守」に戻しています。

なお、寺院などにも「留守職」という役職があり、ここから生まれたものもあります。

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森岡浩／Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

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