〔特集〕2025〜2026年、3大展覧会開催 “ゴッホイヤー”を楽しむ─Vincent van Gogh─ ゴッホがこの世を去った1890年の135年後にあたる2025年から26年にかけて3つの大規模な展覧会が日本各地で開催されます。27歳で画家を志し、37歳で没するまでに約2000点の作品を描き、ひと目見て誰もが“ゴッホの絵だ”とわかる独自の画風に到達した人の家族、画業、生涯を、各展覧会の担当学芸員の方々のお話から紐解きます。
前回の記事はこちら>>*掲載作品がどの展覧会で展示されるか、あるいは展示されないかは、作品名に続く数字でご確認いただけます。①=「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」 ②=「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」 ③=「ゴッホ・インパクト─生成する情熱」 ④日本での展示なし
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ゴッホになった芸術家・森村泰昌さん
自画像を読み解く
1985年、自らゴッホの自画像に扮して撮影した写真作品《肖像(ゴッホ)》を発表した現代美術家の森村泰昌さん。その後の芸術活動の中心となるセルフポートレートシリーズの最初のテーマにゴッホを選びました。
森村泰昌《肖像(ゴッホ)》③ 1985年 ポーラ美術館
copyright the artist, courtesy of ShugoArts
「制作した当時の私は、若い頃の苦悩するゴッホを、どこか居心地の悪さを感じながら生きる自分と重ね合わせていました。ゴッホの自画像を見て、鏡に映った自分を見たような気がしたのです」
《画家としての自画像》① 1887年12月-1888年2月 油彩、カンヴァス
珍しくサインが書き込まれていることから、発表することを意図して描かれたと思われる自画像。
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団) Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)
生涯で40枚の自画像を描いたゴッホ。森村さんは、著書『自画像のゆくえ』で、レンブラントに次ぐほど多く描かれたゴッホの自画像について「ゴッホにとって、自分の“顔”の絵ができることが、そのまま、自分の“画風”が完成することにつながっている」と分析しています。
《自画像》② 1887年4月-6月 油彩/厚紙 32.4×24センチ クレラー=ミュラー美術館
パリ時代、自身を鏡に映して大量の自画像を制作。カンヴァスではなく紙に描いた習作も多い。
©Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands.Photography by Rik Klein Gotink

「ゴッホは自画像で自分の内面を描いたのではなく、自分を描くというプロセスを通じて、どんな画家になるかを模索したのでしょう。年代順に並べてみると、その変化が見て取れます。パリ時代の最後に描いた《画家としての自画像》で、ようやく自分の画家としての顔=画風を持つに至りました。私は2016年に改めてゴッホと向き合い、この人の炎は赤ではなく、凍った青い炎なのだと考え、それが作品(下)につながりました。ゴッホは、図らずも神様から名指しされてしまった人。画家を超えて別格の存在になった人なのだと思います」
森村泰昌《自画像の美術史(ゴッホ/青い炎)》③ 2016/2018年 アーカイバルピグメントプリント/カンヴァス ポーラ美術館
最後期の自画像《渦巻く青い背景の自画像》に扮した、ゴッホ自画像2作目の作品。
Copyright the artist,courtesy of ShugoArts
Courtesy of ShugoArts
森村泰昌さん
1951年大阪府生まれ。京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科修了。一貫して「自画像的作品」をテーマに作品を作り続ける。2018年、自身の作品を展示する「モリムラ@ミュージアム」を大阪市に開館。11年度秋の紫綬褒章受章。
お話を伺った方々大橋菜都子さん/東京都美術館 学芸員専門はフランス近代美術。「ゴッホとゴーギャン展」等を担当。主な著書に『ルノワール作品集』がある。
塚原 晃さん/神戸市立博物館 学芸員専門は南蛮美術など、西洋の影響を受けた日本美術全般。「メゾチントと洋風画」(『國華』1498)など論考多数。
工藤弘二さん/ポーラ美術館 学芸員専門はフランス近代美術史。おもに印象派の画家たちをテーマとした展覧会を担当している。
(次回へ続く。
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