連載「いのちに想う」7月 夜行性
スナガニ
文=小林朋道(鳥取環境大学学長・動物行動学者)鳥取砂丘の海辺に4月ごろから姿を見せはじめ、砂に掘った垂直の巣穴に11月ごろからずっと籠り冬を越すスナガニ。
春・夏・秋の活動期間の彼らの生活は、いわば夜型で、主に夜間、砂浜を動き回って餌を捜す。
日中、巣穴の外で活動する個体もしばしば見られるが、昼夜逆転させて考えれば人で言う、“夜間労働”だろうか。
かつて、スナガニの行動を調べた学生が二人いる。一人は「彼らが巣穴の中で行っている行動」、もう一人は「夕方から夜明けにかけてのスナガニ同士の縄張りを巡るやりとり」を調べた。
二人の研究はどちらもスナガニの新しい習性を明らかにしてくれたが、「雄が雌に向ける求愛のディスプレイ」は、なんだか見ていておかしかった。
自分の巣穴の入り口付近に陣取った雄は、雌が近くを通ると勢いよく背伸びしてアピールするのだが、雄の中には、雌がよほど魅力的だったのか、勢い余ってついにジャンプして、弧を描き頭から落ちるものもいた。
・
この連載の一覧へ>>