名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:外郎(ういろう)
「外郎」という名字の旧家があります。かなりの難読名字のはずなのですが、多くの方は正しく「ういろう」と読めるのではないかと思います。
神奈川県小田原市を代表する銘菓に「ういろう」があり、これを作っているのが外郎(ういろう)家なのです。
さて、外郎家は中国元(げん)の朝廷に仕えていた陳延祐が、1368年、元滅亡の際に日本に亡命して博多に住んだのが祖です。その際、中国で「礼部員外郎」という役職についていたため、「外郎」を名字としました。
2代目が上京、医術や大陸の知識、外交力を発揮し、朝廷、幕府に重用されました。家伝薬の「透頂香(とうちんこう)」を作り、さらに菓子の「ういろう」も考案。どちらも家名より「ういろう」と呼ばれるようになりました。
応仁の乱により京都が荒廃し、家の存亡が危惧されるようになり、伊勢新九郎盛時(後の北条早雲)に誘われ、5代目が1504年に小田原に移住しました。以後小田原で薬と菓子を商っています。
江戸時代、歌舞伎役者2代目市川團十郎の声が出なくなったときに、薬のういろう「透頂香」で回復したことから、御礼に團十郎は歌舞伎十八番「外郎売」を上演して「薬のういろう」が有名になりました。なお、歌舞伎とは違って行商はしていません。
小田原市の店舗は、まるでお城のような外観です。また昔の蔵を利用した外郎博物館も併設されており、独特な店構えの理由や外郎家ゆかりの文化も紹介しています。
「ういろう本店」詳しくはこちらからご覧いただけます(ういろう公式サイト)>>
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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