名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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船越(ふなこし)
江戸時代以前、鉄道も車もなく、陸上は歩くしかありませんでした。そのため船運が盛んで、長距離の移動や荷物の輸送には専ら船が使われたのです。
しかし、当時は大きな船でも湊から湊へと沿岸伝いに行くのが普通で、庶民の船は陸地からあまり遠くないところを進んだのです。
海岸線にあまり凹凸のない場所だと、この方法でも問題ありませんが、リアス海岸のように地形が入り組んでいると、海岸伝いに行くのは難しくなります。
また、細長い半島が海に突き出しているところでは、そこを大きく迂回するととても時間がかかります。
そのため、半島の付け根の辺りの細くなっているところに一旦上陸し、そこから船を曳いて半島を渡り対岸からまた船を出しました。こうして船で半島を越してショートカットする場所のことを「船越」といいました。
この他、船で湾を横切って対岸に渡る渡船場も、「船で越す」ことから「船越」といいました。
歴史上最も有名な船越氏である淡路の船越氏のルーツは駿河国有度郡船越(現在の静岡県静岡市清水区)です。ここは現在では内陸部となっていますが、かつては入江があり、渡船場があったことから「船越」という地名になりました。
現在は西日本に多く、とくに兵庫県淡路島と京都府南丹市に集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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