浅くて広い川を「広瀬」と呼んだ江戸時代。川魚が豊富に獲れる重要な土地でした

名字365　姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも？知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら＞＞

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広瀬・廣瀬（ひろせ）

「広瀬」は地形に由来する名字です。旧字体を使用して「廣瀬」とも書きますがルーツは同じです。

「瀬」とは、歩いて渡れるくらい浅い川の流れを指します。こうした場所は流れが速いので、急流のことも「瀬」といいました。

江戸時代以前は、江戸や大坂、京といった大都市や、東海道などの主要街道を除けば、川に常設の橋が架かっているところはあまりありませんでした。


大きな川は渡し舟で渡り、小さな川は浅い場所を選んで歩いて渡ったのです。この歩いて渡れる場所が「瀬」なのです。

また、瀬には水生昆虫が豊富で、これを食べる魚もたくさんいました。従って、「瀬」はとても重要な場所でした。

「瀬」の場所は川幅が狭いことが多いため、広い瀬のあるところはとくに「広瀬」と言って区別しました。ここは川魚の獲れるいい場所だったに違いありません。

そして、「広瀬」のある場所は「広瀬」という地名にもなり、それらをルーツとする地名由来の「広瀬」もたくさんあります。

現在は沖縄県と東北を除いて全国に広く分布し、とくに山梨県に集中しています。

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森岡浩／Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

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