名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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難読名字:七部(たなべ)
「七部」と書いてなんと読むかわかるでしょうか。漢字は簡単で、発音するとごく普通の名字なのですが、漢字からは全く読むことができせん。
この名字を読む鍵は「七夕」という漢字にあります。「七夕」は7月7日の節句のことで、読み方は「たなばた」です。
「たなばた」の由来にはいくつかの説がありますが、機織り機で神聖な織物を織る棚機つ女(たなばたつめ)の後ろ部分が落ちたもの、という説が一般的のようです。
そして7月7日の夕方に行われたため、「たなばた」という言葉に「七夕」という漢字をあてたのです。古い時代には、音ではなく意味から漢字をあてることも珍しくありませんでした。
従って、「七」が「たな」で「夕」が「ばた」というわけではないのですが、これを強引に「七」と「夕」に分けて「七」の部分を「たな」とし、「七部」と書いて「たなべ」と読むのです。
おそらく、「田辺」さんの一族が分家して漢字を変える際に、こうした当て字を思いついたものでしょう。
現在は栃木県足利市と茨城県水戸市に集中しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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