連載「季節の香りを聞く」6月〈志野袋〉蓮

蓮葉香(はちすはこう)
蓮葉のにごりに染まぬ心もて
なにかは露を玉とあざむく古今和歌集──僧正遍昭──
選・文=蜂谷宗苾(志野流香道 第21世家元)蓮の葉は、泥の中にあっても周りの泥水に染まらない清らかな心を持っているのに、なぜ葉の上の露を白珠に見せかけて人の目を欺くのだろう。
以前、杭州での出稽古の際、実際に宝石と見違えるような滴(しずく)が葉の上に乗っていたことがありました。その時の馥郁(ふくいく)たる香りは、まだ鼻腔に残っております。
この組香は、前半に「は・ち・す・は」と仮名に置き換えた香りの順を当て、後半は「玉」と「露」の香りを聞き分けます。そして、最後は記録上、正解を逆に書いて人を欺くのです。
法華経に「世間の法に染まらざること蓮華の水に在るが如し」とありますが、果たしてこの混沌とした時代に生きる自分は、泥中の蓮となって美しい花を咲かせられるのか…なんて頭に浮かべながら、原稿締切夜中の締めラーメン、汁は飲み干す派。レンゲに深謝。
~志野流組香 外組-十三番~

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