連載「千年の文様の教え」
6月「藤」
選・文=八條忠基(「綺陽装束研究所」主宰)美しい紫色の花穂をなよやかに垂らす藤。初夏の爽やかな風にそよぐ風情はいかにも優雅です。『源氏物語』にも登場する「藤壺」は、内裏・後宮「飛香舎(ひぎょうしゃ)」の別名にもなっていますが、坪庭に藤が植えられていたことによる名称。
藤立涌(ふじたてわく)

八藤丸(やつふじのまる)
衣冠や直衣(のうし)装束ではく袴「指貫(さしぬき)」に藤丸文様が多用されるなど、藤は有職文様としてさまざまに用いられました。こうしたことの背景には、貴族社会で中核をなした「藤原氏」の影響もあるでしょう。
藤襷唐花(ふじだすきからはな)

藤丸(ふじのまる)
また松に巻き付く藤は、『枕草子』の「めでたきもの」の中に「花房長く咲きたる藤の花の松にかかりたる」とあるように、特に賞美されました。強く結び合う松と藤は、夫婦和合のシンボルでもあったのです。
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