名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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珍しい名字:蓑(みの)
「蓑」という名字があります。
「蓑」とは、萱やスゲ、稲藁などで編んだ外衣で、主に雨や雪を防ぐために雨具として使いました。こうした物の名前に由来する名字は、そのものを作っていたか、売っていた人が名乗っていることが多いのですが、旗本の蓑家には独特の由来が伝わっています。
戦国時代、本能寺の変で織田信長が討たれたとき、徳川家康はわずかな家臣のみを連れて堺見物をしていました。
先が見えない状態のため一刻も早く自分の所領に戻りたいのですが、信長が討たれたため、畿内は領主のいない土地になっています。いわば、手勢を率いずに敵地の中にいる落ち武者のような状態に陥ったのです。
江戸時代とは違って戦国時代の農民は武器を持って積極的に落ち武者狩りをするため、とても危険な状態です。
こうした全面敵だらけの中を三河まで逃げ延びる際、随行していた家臣の服部正尚が家康の変装用にと農家から蓑と笠を調達してきました。そして、家康はそれらを身につけて変装し、無事敵地を突破して帰国したのです。
落ちているときには、褒美として与えるものはとくに持ち合わせていません。そのため、しばしば名字を褒美として与えました。このとき、家康は服部正尚に対して、名字だけではなく「蓑笠之助」というフルネームを褒美として与えています。
殿様から拝領した名前は名誉なものなので、蓑家では以後代々「蓑笠之助」と名乗ることになりました。
そして、江戸時代中期に富士山が爆発した際には、子孫の「蓑笠之助」が復興に活躍しています。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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