カルチャー&ホビー

コウモリは誤解されている? 動物行動学者がそう感じる理由とは

2025.05.08

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連載「いのちに想う」5月 出産

コウモリ

文=小林朋道(公立鳥取環境大学学長・動物行動学者)

5月は日本の洞窟性コウモリの出産がはじまる時期だ。雌は前年の秋に雄と交尾を済ませて冬眠に入り、4月以降に目を覚ます。

仔(あるいは卵)を産む動物は、繁殖や人生(動物生?)に関して大きく2つのタイプに分けられる。


多数の仔(卵)を産んで、その後あまり世話をしないタイプ(多産戦略)と、少数の仔(卵)を産んで、しっかり世話をするタイプ(少産保護戦略)だ。

哺乳類で少産保護戦略の最先端を行くのは我々ホモサピエンスだが、コウモリも1年1回の出産で1仔しか産まず、1か月程度、仔の世話をする。

たとえばキクガシラコウモリは5月以降に出産した後、1か月以上保育をする。仔が独立する前には、仔の両手(両翼)をつかんで飛翔の練習をしてやる。

常々私は思う。コウモリは誤解されている、と。

哺乳類で最も多いのは齧げっ歯し類るいで約2500種、次に多いのがコウモリ類で約1000種。そのうち血を吸う種は僅か3種。

コロナ禍で病原体の宿主として悪者にされたコウモリだが、ヒトを苦しめる病原体1500種ほどのうちコウモリを宿主とするのは2パーセントに過ぎない。

日本を含めて世界中で、今、急速に減少しているコウモリ類も、ヒトの命を守る生態系の中でとても重要な役割を果たしているのだ。

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この記事の掲載号

『家庭画報』2025年05月号

家庭画報 2025年05月号

作品=椿あぐり(切り絵作家) 撮影=本誌・武蔵俊介

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