連載「季節の香りを聞く」5月〈志野袋〉菖蒲
菖蒲香(あやめこう)
五月雨(さみだれ)に沢辺の真薦(まこも)水越えて
いづれ菖蒲と引きぞわづらふ太平記──源頼政──
選・文=蜂谷宗苾(志野流香道 第21世家元継承者)平安時代、都では夜になると鵺(ぬえ)(顔は猿、体は狸、手足は虎、尻尾は蛇の怪物)が出没したそうです。その妖怪を退治したのが源頼政。
褒美として鳥羽院に菖蒲前という女性を所望しますが、院はちょっと意地悪。菖蒲前とそっくりの娘を同じ格好で並ばせ、そこから選べというのです。頼政は困り果てますが、当意即妙、自分の苦しい胸の内と、外に広がる情景を和歌にまとめました。
普段なら菖蒲を見つけられるのに、池の水かさが増して花が隠れてしまったのですね。組香では、菖蒲の香りを覚えた後、五つの香りが回ってきて、どこに菖蒲が隠れているかを探します。
ところで菖蒲(あやめ)、杜若(かきつばた)、花菖蒲(はなしょうぶ)の見極めは永遠のテーマ。菖蒲湯(しょうぶゆ)で使う菖蒲(しょうぶ)は全く別の植物。
~志野流組香 外組-十番~

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