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子孫に「吉」が訪れるように。願いが込められた名字「吉川」

2025.05.26

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墨アート製作/越智まみ

名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら>>

吉川(よしかわ・きっかわ)

「吉川」に限らず「吉~」という名字には2つの由来があります。

1つは山や川、田などに対して「恵みをもたらしてくれるように」という願いを込めて名乗ったものです。名字に願いを込めることで、子孫に「吉」が訪れることを期待したのです。

もう1つの由来は、植物のアシ(葦)に因むものです。


アシは水辺に生えるイネ科の多年草で、古くは葦簀(よしず)をはじめ、日常生活の様々な場面で利用されていました。

しかし、「アシ」という言葉は「悪(あ)し」と発音が同じため、関西を中心に「ヨシ」と言い換えることも多かったのです。

そして、ヨシの茂っている川は「よしかわ」といわれ、漢字では縁起のいい「吉」の字を当てました。

つまり「吉川」という名字のルーツには、「恵みをもたらす川」という意味の「よしかわ」と、ヨシの茂っている川に因む「よしかわ」の2つがあるのです。

ところが、「吉川」には「きっかわ」という読み方もあり、全国の「吉川」さんの1割近くは「きっかわ」と読みます。

では、この「きっかわ」はどこから来たのでしょうか。

静岡市に清水区吉川という地名があります。ここは「よしかわ」ではなく「きっかわ」と読みます。鎌倉時代には「吉河」と書き、古くは「きかわ」とも言われたらしく、漢字は当て字なのでしょう。

ここに住んだ藤原氏の一族が「きっかわ」氏を名乗り、漢字では「吉香」と書きました。やがて「吉河」「吉川」などとも書かれるようになり、次第に「吉川」に統一されたのです。

鎌倉時代には安芸国(広島県)や石見国(島根県)に領地をもらって広がり、なかでも安芸の吉川氏は戦国大名として活躍、吉川元春と小早川隆景の兄弟が毛利本家を支えた「三本の矢」の話は有名です。

現在でも、広島県を中心に、島根県、岡山県、鳥取県では「よしかわ」よりも「きっかわ」の方が多くなっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

墨アート製作 書家・越智まみ(https://esprit-de-mami.com/

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