「西川」さんのルーツは、中世の人達が好んで住んだ"日当たりの良い場所”

名字365　姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも？知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。連載一覧はこちら＞＞

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西川（にしかわ）

「西川」は方位由来の名字です。

中世の人達は谷間に住むことを好みました。当時の川は護岸工事がされていないため、広い平野ではしばしば洪水を起こして田畑が流されてしまいますし、なにより戦乱の多い時代には、どこから敵が攻めて来るかもわからない平野の真ん中は無防備でした。

その点、谷間だと入り口付近を防備すればよく、川が流れて山の近い谷間は住むのに適した場所でした。


そうした谷間の中でも、とくに人気のあったのが東側に開いた谷間です。

東側が開いていると日当たりもよく、稲もよく実りました。そして、谷間の入り口に近い場所に谷を守る武士が住み、その奥に向かって田畑が広がっていたのです。

東に開いている谷ですから、谷の奥の方角は西になります。そして、その川の上流付近に住んだ人達が「西川」さんとなりました。

現在、「西川」は近畿地方を中心に四国から北陸の間に集中しています。なかでも多いのが奈良県と滋賀県で、両県ともに20位以内の名字となっています。

なかには谷間とは関係のない「西川」さんもあります。

滋賀県竜王町には西川という地名があります。ここは谷間ではなく平野で、日野川の東側が東川、西側が西川という地名になりました。

そして、西川地区に住んだ一族が「西川」を名字とし、その一族から寝具で有名な西川産業の西川家が出ています。

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森岡浩／Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。

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