〔特集〕歴史と希望の物語を伝える「学び舎の桜」 毎年春になると、子どもたちの成長を祝福するかのように開花する学び舎の桜。ひときわ美しく咲き誇る花は、長年木々が大切に守られてきた証です。学び舎の桜は、いつ誰がどのような想いで植えたのでしょうか。5校の桜の歴史と物語に迫ります。
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麻布中学校・高等学校【東京・麻布】
校舎に囲まれた中庭にはテニスコートが2面あり、周囲に桜の木が植えられている。一部は目下、植え替え中。
自由闊達な校風で知られる麻布中学校・高等学校は、東京・港区の高台にある中高6年一貫教育の名門男子校。グラウンドの桜越しに東京タワーが見える風景は、都心の学校ならではです。
桜花爛漫の校庭でサッカーに興じる生徒たち。創立者、江原素六氏が提唱した自主自立の精神を重んじる同校は、制服も校則もなく、髪の色も自由。
自由な校風のもと花開く都会の桜と子どもたち
もとは茶畑という校庭は周囲に高い建物がないため日当たりがよく、樹齢80年ほどの桜の木々も元気いっぱい。一方、武家屋敷跡につくられた校舎の中庭に咲く桜は、木造の旧校舎が建てられた1900年頃には“初代”の木々が植えられていたことが当時の写真からわかっています。
その後、コンクリートの現校舎が建てられた際に桜も2代目となり、今では3代目の桜も老木となりつつありますが、卒業生の寄贈もあり、桜が絶えることはありません。
麻布中学校・高等学校教室はいずれも“桜ビュー”。ロの字型の校舎に囲まれた中庭の桜がよく見える。入学式の日、中庭は桜の前で記念撮影をする新入生と家族でにぎわい、幸せな空気で満ち満ちる。
普通教室棟の一角、麻の葉形の校章が輝く旧時計台の内部はアールデコ様式。
現在の中庭の桜は大半が卒業生寄贈の記念樹だ。
関東大震災や戦時中の空襲も奇跡的に免れた校舎に守られ、学校になくてはならない桜の園となっています。
平 秀明第10代校長は、大学時代を除き、生徒時代と教員時代を合わせて46年間、麻布の桜を見つめてきた方。
入学式当日、モーニング姿で新入生300人を迎える平校長。
「皆さん、満開の桜を愛でますが、散り始めの花吹雪も、葉桜もいいものです。そして、秋の紅葉がまたきれいなんですよ。私は葉が赤や黄に色づいて、やがて落ちるところまで桜は楽しむべきだと思っています」と、新鮮で奥深い“桜観”を披露してくださいました。
植物全般を好み、校内の花壇の世話にも熱心な平校長は、「世話をすれば、必ず花を咲かせ、実をつける植物と違い、生徒はいろいろ手をかけても、悪いことをしでかすこともあります」と微笑みながら話します。
正門そばの花壇に並ぶチューリップは、園芸が趣味の平 秀明校長が自ら植えたもの。
「でも、子どもとはつまずいたり、失敗しながら、成長するもの。道を踏み外さない限り、我々はおおらかに見守ります」。愛情深い校長と教員の皆さん、桜の木々に見守られて成長した生徒たちは将来、大輪の花を咲かせるに違いありません。
新入生に進呈される3冊計5キロの『麻布学園の一〇〇年』。卒業生が桜の思い出を綴った文章も多数載っている。
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