連載「千年の文様の教え」
4月「山吹」
選・文=八條忠基(「綺陽装束研究所」主宰)『後拾遺和歌集』の一首、兼明親王(かねあきらしんのう)の「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに なきぞあやしき」で知られる山吹ですが、事実として一重咲きの山吹は実がなります。
尾長鳥山吹唐草(おながどりやまぶきからくさ)

山吹立涌(やまぶきたてわく)
しかし「七重八重」とあるように、平安時代から山吹といえば、赤みがある黄金色の八重咲き品種を指すことが多く、有職文様でも山吹は八重で描かれます。
『源氏物語』玉鬘(たまかずら)の帖の衣配りの場面で、光源氏は若い玉鬘に「山吹の細長」を贈り、野分の帖でも玉鬘は八重の山吹にたとえられます。「優雅」というよりも「華麗」といったイメージが山吹にはあったようです。
山吹立涌(やまぶきたてわく)

山吹立涌(やまぶきたてわく)
桜の散った後に七重八重と咲く山吹は、晩春を華やかに彩るゴージャスな植物として扱われたのです。
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