名字365 姓氏研究家の森岡 浩さんが日本人の名字を毎日紹介します。あなたの意外なルーツが分かるかも?知れば知るほど面白い、名字の世界をお届けします。
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夏目(なつめ)
文豪・夏目漱石で有名な「夏目」という名字、その半数以上が愛知県と静岡県の県境付近に集中しています。ところがそのルーツとなった場所は長野県にあります。
信濃国に住んでいた清和源氏の一族である二柳国忠は、源頼朝に仕えて水内郡夏目の地頭職を与えられ、子国平の時に地名から「夏目」と名乗ったのが始まりです。
ここはJR信越本線篠ノ井駅から南西に向かって20分ほど歩いたところで、現在は長野市篠ノ井石川という地名になっています。
そして、少し山を登ったところには湯入神社という神社があり、ここが夏目氏の拠った夏目城の跡とされています。その入り口には「夏目一族発祥地」という碑が建てられています。
子孫は信濃夏目氏として、戦国時代には武田氏に従っていました。
この分家に、三河国幡豆郡に移った一族があり、三河・遠江両国に広がりました。そして、徳川家康に仕え、三方ヶ原合戦で徳川家康が武田信玄に大敗した際に、家康の身代わりとなって討死した夏目広次(吉信とも)が有名です。
夏目漱石は、このうち信濃夏目氏の子孫と伝えています。
武田氏没落後に武蔵に移り、江戸時代中期に直清が牛込馬場下横町の名主になって代々世襲していました。漱石は直清から数えて6代目の直克の五男にあたります。
森岡浩/Hiroshi Morioka姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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