受け継がれる文化とデジタル表現との出会い
落合陽一
落合陽一さん(おちあい・よういち)メディアアーティスト。1987年東京都生まれ。境界領域における物化や質量への憧憬をモチーフに作品を展開。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター センター長、准教授。
メディアアート制作をはじめとした幅広い領域で活躍し、「現代の魔法使い」とも呼ばれる落合陽一さん。
日本文化が作品テーマの一つとなることも多く、2024年9月開催の個展では、能の演目『竹生島』の龍神をユニークに進化させた〈鰻ドラゴン〉を発表。
日本文化と相関する独自の世界観上・〈鰻龍(うなぎドラゴン)〉(2024年)。個展「昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン」で公開された彫刻。生成AIで作成したデザインを基に木材を削り出している。下・「ヌル庵:騒即是寂∽寂即是騒」展示風景(2024年)。レンズや変形ミラーによって波のように変化する光が映し出される。©Impress Corporation
また、仏教でいうところの「空」や「無」を意味する「ヌル」という概念と茶室を掛け合わせた〈ヌル庵〉も話題を呼びました。
染めの技法で表現された〈割れた液晶の夢を見る手ぬぐい〉「手・ヌル・GUI」展示風景(2024年)。手ぬぐいの老舗「永樂屋」の十四世細辻伊兵衛さんとコラボレーションした展覧会。「手ぬぐいがもし割れたら」という発想からデザインを作成。色同士が混ざり合って生まれる絶妙なグラデーションや色合いを利用し、液晶の破損を表現している。
「伝統とは常にコンテンポラリーなもの。新しい何かを生み出し続けることが伝統の本質であり、時代に取り残されることなく今日まで継承されてきた理由の一つでもある。そしてそういった新規性を持つからこそ、伝統は現代芸術や最新のテクノロジーとも相性がよい」と話す落合さん。
デジタル表現を駆使し、伝統文化の未知の可能性について気づきを与える創作活動に、今後も注目です。
(次回に続く。
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